Ⅱ関係的存在

 人間は本来、関係のなかに存するものなのです。

 人間はだれでも、関係のなかに生まれ、関係のなかで成長し、関係のなかで感じ、考え、動き、関係のなかで死ぬのです。われわれの一生とは、他者によってその生を抱きあげられてはじまり(誕生)、他者のなかで育てられ(家庭および養育関係)、多くの他者達の仲間入りをしながら(近隣社会・学校・職場)、やがて、自己のなんたるかを求めつつ、その対他存在のさなかにあって自己の生命を燃焼しつづけてゆくことに他ならない。われわれは、まさに、揺籠から墓場まで、人間関係の絆のなかにあり、その絆のなかで自己を形成し、他者との関係のなかに存在の意味を見出してゆくのです。このような姿でわたしたちが実存するということは、なんら手のこんだ証明を必要としない事実であり、もっとも素朴な、そしてもっとも具体的な日常的事実なのです。