序論をおわるにあたり、「人間の生きる意味」について、簡単にまとめておきたいと思います。

 誰もみずから好んで男になったものもいないし、女になったものもいません。また、誰もみずから好んで、この時代に、この民族の中に、この家族の中に生まれてきたものはいません。それだから、自分が男であるとか女であるとかいうことに不満を感じたり、自分の環境を嘆いたりすることは、全く不毛な思い患いなのです。このようなことは、思い患うことによって、なんの変更も、何の解決も生じない、このようなことを思い患うことは全く意味のないことなのです。

 われわれ人間がしなければならないことは、その時代の中で、その民族の中で、その家族の中で、どうすれば、真に人間としてよりよく生きることができるかを考えることなのです。

 ここで先に結論を述べておくならば、真に人間としてよりよく生きるということは、自己を実現することであり、人間の生きる目的は、自己を実現し、幸福と感じられる人生を生きてゆくことなのです。そして、どうすれば人間は、自己を実現できるか、なぜ、自己を実現できない人間がいるのか、というのがこの論文のテーマであり、私の一生のテーマなのです。