相対的にいって、人間の生き方を歴史的にみてみると、現代の豊富な生産力により、「食べるために生きる」という生き方から、「生きるために食べる」という生き方に、比重が移ってきているように思われる。今後、さらなる人間の努力により、「生きる」ということに更に重点が移行してゆき、究極的にはすべての人間が「生きるために生きる」という生き方に、限りなく近づく社会になっていくと、予想できそうです。
このことに関して、フロムはこう述べています。「人間は厖大な機械的エネルギーを利用することに成功したので、生きるための物質的諸条件を生産するために、人間のエネルギーのすべてを労働に注ぎ込むという課題からは解放された。したがって人間は自分のエネルギーの相当の部分を、生きることそれ自体の問題に使うことができたのである。」と。
フロム著 「人間における自由」 東京創元社P173