自己実現の過程では、精神的な苦悩に襲われる。

私は、自分が自己実現したあとは、自分の回りの人、ひいては、全人類を自己実現に導けるのではないかと思い、そういうメッセージを卒論に込め、そう出来ると思っていた。この卒論はそのための第一歩だと。

「君は、自己実現したのかね?」と聞いた教授にしても、考えていないから、答えが出ていないのだと思っていた。しかし、実際は、そうではなかった。考えていても、答えが出ていなかったのだ。

考えれば誰でも答えが出るというものではない、ということに気づき、私は、私と関わってきた人達を、精神的な苦悩に陥れてしまうのではないか、という強い恐怖に襲われた。

全人類を幸せに出来ると確信していた人間が、全人類を不幸に陥れてしまうのではないか、という恐怖に襲われたのだ。

私は、卒論にも書いていた。自己実現に失敗したら、精神的な病になると。でも、これは、卒論の時点では、いろいろ文献を読んで、導き出したもので、自分の体験からの言葉ではなかったのだ。

そして、強い恐怖に襲われた時、自分が、卒論に書いた精神的な苦悩を、体験することになったのだった。

私は、まだ、自己実現しきってなかったのだ。