私が、プラトンの『ゴルギアス』を読んだのは、大学3年の時だった。

そろそろ卒論のテーマを決めなければならない時期だった。

テーマをいろいろ探しているうちに、『自己実現』という概念が、私の目に止まった。

人生の究極の目標は、『自己実現』なのではないか、と。

 その時期、哲学的になっていた私だったが、心理学の中に、私の悩んでいた、答えがあるような気がしてきた。

私は、アブラハム・ハロルド・マスローという人の本を何冊も読み始めた。

 彼は、欲求階層説を提唱していた。

 簡単に言えば、基本的欲求が、満足されると、社会的欲求が生まれ、それが、満足されると、自己実現の欲求が出てくるという、人間の欲求が階層になっているというものだ。

 自分に照らし合わせて、何度も、考えていくうちに、これっておかしいぞ!!と思い始めた。