2021.6.5

Direngrey 疎外

@ガーデンシアター


セトリ


01.DOZING GREEN
02.絶縁体
03.空谷の跫音
04.人間を被る
05.Devote My Life
06.CLEVER SLEAZOID
07.DIFFERENT SENSE
08.赫
09.Ranunculus
10.谿壑の欲
11.The World of Mercy
12.朧
13.かすみ

EN
01.Followers
02.OBSCURE
03.落ちた事のある空
04.SUSTAIN THE UNTRUTH
05.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇


感想

ディルはライブをしている、と思えるバンドだ。

会場が広くなるとどうしても「コンサート」になってしまう。

熱気や勢いやノリといったものは、どうしても遠くの観客には伝わりにくい。


普通は、ね。


この日はコロナによる度重なる延期や中止を経て、観客を入れてやる久しぶりのライブ


広い会場に席は空けて、密を作らない。

さらに声出しも禁止と、ライブによくある


密集でのヘドバンや

コール&レスポンスや

デスボでのメンバー呼びも

観客の叫びも歓声も


何一つない

静かな空間となるはずだった。



しかしDirの放つ熱気は

聞こえないはずの叫びが観客席に響き


響かないはずの観客の歌声すらも

聞こえてくるかのような



そんな錯覚を抱かせるほど

熱く、激しいライブだった。



怒り、狂ったように叫び続けるVoの京は

いつにもまして激しく動き回り

その声は地鳴りのように響き渡った。

白いシャツは血にまみれ、いつしか顔中血だらけで鬼気迫るパフォーマンスを披露したり


ドラムのしんやはいつも通り淡々としかし激しい音を鳴り響かせる。


ベースのとしやはまた執事のような清潔感のあるやや短めの髪をセットし、グルーブとシャウトでのコーラスで曲に厚みを持たせる。


ギター隊は、感情の発露を隠さず激しく弾きまわる上手のDie

長い髪を振り乱し美しい姿を魅せてくれる。

しっかりとバンドをまとめるように

あまり動かずに落ち着かせるのは下手の薫

今日は短めの髪を後ろに束ね、より大人の色香を感じさせた。




1曲目のドングリでは

アコースティックに載せて

透き通る歌声を響かせる。


そこからの


SE


そして


「疎外」


ツアータイトルの演出


カッコよすぎる。

久しぶりの空谷からの

人間~、Devote~、clever~


ここはまさにライブ会場と言わんばかりの激しさ。

会場も熱気に包まれる。

赫にラナンキュラスで静けさを取り戻すかと思いきや

バラードであるラナンキュラスを

これ以上ないほどの哀しさと苦しみを込めて歌い上げる。


Dirのライブはいつもこうだ


楽しい、穏やか、から突き放してくる。


ひたすらに現実を突きつける




生きる意味も

誰がルールなのか?

誰が正しいのか?

誰のために生きる?


答えは教えてはくれない


よくある前向きバンドみたいに



こうしたら大丈夫だよ!

明日があるよ!



なんてことは彼らは唄わない。



答えは自分が見つけるしかない。



五輪の輪が焼け焦げ

金のメッキを塗りたくった太った人間が

殴り合うPVが流れる。



利権に塗れた五輪


争ってるのはマラソンのゴールではなく

その先にある金塊。


ただ

だからと言って


良いとも悪いとも言わない。



それが現実だろ?

と。



~Mercy、最新曲の朧からのかすみで本編終了。


朧では生まれた怪物の我が子(?)を絞め殺す。

~Mercyは、ひたすらに凄惨な虐めとそこからの復讐

誰も救われない映像をバックにひたすらに鳴り響く曲



アンコールも同じ熱が続く。

声の出せない手拍子だけのアンコールが揃った時は圧巻だった。


待ち望んでいる。

それが伝わる瞬間だった。



そしてアンコール3曲目にはコロナで中止になったツアーの時に発売した


「落ちた事のある空」


これのバック映像もまた酷く心に突き刺さるものだった。


ひたすらに戦争の映像と人の腐敗を描く。


そして、



8.6



あぁ


落ちた事のある空、ってそういう意味か、と。



爆弾と爆撃と原爆と。



あの日、確かに



日本では「空が落ちた」



それを知っているはずの

僕らの国は


いま何と戦い、何を勝ち得ているのだろうか?



利権や、政治が不要とは思わない。

ある程度は必要なものだろう。


しかし、どこか「歪な君」である現代



それでも京は叫ぶ


「この時代に生まれたお前らぁ!!!」



その先は言わなかった



しかし


きっと



ラナンキュラスの最後の歌詞


「叫び生きろ!私は生きてる」



僕には、その言葉が1番胸に刺さるんだ。



いつもDirのライブは苦しさと共にある。

現実を突きつけられる。

醜い映像もたくさん流れる。


清廉潔白な、楽しさが溢れるような

そんな空間ではない。


まさにライブ


生々しいまでの。



それこそが心を揺さぶられ、

そしてそれでも生きよう、と


そう思う源泉になるのだ



この難しい情勢でライブを

やってくれた事に感謝



いつも全力で後先考えないほどの

パフォーマンスを魅せてくれた事に感謝



ある種ではサガン鳥栖とも重なるのは

その全力さ

変わり続ける事を恐れない

チャレンジャーであり続ける強さ


常に感動がそこにある。



音楽に感謝して

帰途につく



Direngreyの全てに感謝