2015年6月27日
Jリーグ第17節

1stステージ最終節

鳥栖 VS 広島 2-2(豊田2)


前:5勝7敗4分 11位
後:5勝7敗5分 11位


~変えた事と変わらなかった事 

 そして少しだけ変わった未来


■前提
2015年第17節

丹羽、磯崎が怪我。
さらにチェソングン、キムミンヒョクが兵役の手続きで離脱。
ただでさえ失点が多い中でDF陣が足りない。

J1初の4連敗 後半の失点急増。
悪いことが続いている鳥栖。

対するは2位につける広島。
今期も佐藤や青山ら、技術の高い選手を中心に攻めのサッカーを見せてる。


■スタメン
GK:林
DF:吉田 菊池 谷口 キムミヌ
MF:藤田 高橋
MF:水沼 鎌田 ペク
FW:豊田

■前半
注目していたのは、「そして、誰も居なくなった」状態のSB
ここは、浦和戦でも上手くいっていたキムミヌを一列下げて対応。
これは妥当な判断。

そしてそのミヌが下がった左SHが誰が入るのか?
ここはペクソンドン。
韓国繋がりで連携も良いとの判断だろうが、
ペクはサイドでの守備にややパワーが足りないと感じるシーンもある。
これがどう出るか?

そして、一番の驚きは、トップ下に18歳鎌田を初先発。
ここ最近の池田にしろペクにしろ最後の質が足りてない。

途中出場ながらゴールを奪った松本戦や、
素晴らしいアシストをした名古屋戦を見た上で
鎌田の質の高さは証明済。

図らずも、技術タイプの広島相手に
クラッシャーである池田や早坂、ミンヒョクが居なく
(鳥栖の中では)技術タイプが並んだのは不思議なめぐり合わせ。


その鎌田は予想の倍くらい前プレを出来ていた。
池田の良さは前線での強さと戦う姿勢。
これがボディーブローのように相手に効いて来て終盤の鳥栖タイムが始まる。

鎌田は上手さはあるが積極性に欠ける雰囲気があったが
この試合では豊田に引っ張られてか、非常に前への意識が強かった。


そんな鳥栖の攻撃の始まりはほぼキムミヌから。
鳥栖の中でもっとも技術に長けるミヌがサイドバックに居る恩恵を最大限に利用。

現代サッカーではボランチがゲームメイクをするにしろ
トップがためを作るにしろ、ビルドアップする余裕がない。
鳥栖が得意な前からプレスは、ほとんどのチームが
ゾーンで守りながらスペースを消してくる。

つまり、サイドの、それも低い位置が一番余裕をもってボールを持てる。
ここからどれだけ崩しに直結できるビルドアップが出来るか、が鍵となっている。

吉田も長いボールでは良いボールを入れれるようになってきたが、
キムミヌは長短のパスや、ドリブルもある。
なによりチームメイト、そしてGK林からの信頼も厚い。

これによりロング一辺倒ではなく、一度キムミヌに預ける、という
共通意識が生まれ、困ったらキムミヌからやり直す、という形が出来ていた。

また、谷口、菊池、ミヌと後ろでボールを持てる選手が3人もいたこと。
さらに鎌田もボールを持てるタイプであるため、
鳥栖にしてはありえないほどボールをポゼッションできていた。

また、キムミヌは今までは前でのプレーだったため、
後ろを向いてのプレーが多くなったり、
前線で削られながら、、だった。
しかもそれでいて後ろまでカバーしていたので
かなりの運動量を強いられていた。

今日は後ろからのプレーであるため、前を向いてプレーできた。
しかも厳しい状態では上がらないため、体力も余裕を持てて、
いいタイミングでの攻め上がり、クロスと、十分な活躍を見せた。


そして試合はそのキムミヌのクロスから
難しい体制で豊田が頭で決めて先制!

その後も水沼のミドルやクロスからの攻撃など、多彩な攻めを見せた鳥栖。

危なげなく前半は(いつものように)リードして折り返した。


■後半
後半、広島は無理にペースアップする、わけではない。
それでもミキッチ、柏のサイドはやや攻勢を強める。

鳥栖は鎌田のキープ力が活きてきて、
シュートへの積極性はやや低いが、それでも攻撃の中心として機能していた。

それでも広島は後半15分。
カウンターから水沼の戻りが遅れたところに柏。
吉田とのマークの受け渡しもややあいまいになり、不安を感じたクロスは
なんと、PAのはるか後方の青山へ・・・

その青山は25mはあろうかという距離からダイレクトボレー。
アウトにかけたボールは見事な軌道を描いてゴールに突き刺さる。


めったに見れないスーパーゴールで広島が追いつく。

しかし鳥栖はめげない。

ここ数試合の連敗で、またいつもの流れか・・と落ち込むかと思われたが
もうこんな不運はいつものこと、、と言わんばかりに攻めに出る。

しかし鳥栖のシュートはなぜか味方に当たったり、最後のところで運がない。
そうこうしてるうちに広島の低いクロスを谷口が胸で落とそうとしてハンド。。。

これまた不運な失点で1-2と逆転されてしまった。

それでもめげない鳥栖。

失点の直後、ボールを持つと全選手がすぐに自分の持ち場へと戻り
キックオフに備えていた。
喜ぶ広島を尻目に落ち込むでもなく、すぐにプレーを出来るように集中していた。

これを見て「ああ鳥栖はまだ折れてない!」と思えた。


鳥栖は疲れの見えてきたペクに変えて早坂。
これはプレスの勢いを弱めないために地味に効いていた。
ペクも今日はよく守備をしていたが、さすがにこの時間は
やや後ろへの戻りが遅くなっていた。
また、やはりサイドでよい突破を何度も見せてくれたが
その後、どんなクロスを送るのか、
そこからどんな崩しをするのか、が
ややサイドでのアイディアが足りないと感じた。


鳥栖は逆転されても攻め手を緩めず。
両サイドから崩して鎌田のシュートや、水沼のシュートもあるが決まらない。
吉田も右サイドだとやや勝手が違うのか、クロスの質が良くない。

鳥栖の交代は、さらに高橋に変えて岡本
これも似た特徴の交代。

戦術的には大きな問題はない(という監督の判断か?)との事で
体力の問題による交代。

それでも岡本藤田のボランチに、
キムミヌの左SBと、その前に早坂。

なんだか2012年を見てる気分になった。

また、最後は鎌田に変えて池田を投入。

若手の鎌田やペクに変えて 池田、早坂などが出てくるシーンを見て

「あとは先輩に任せときな!」(妄想)

という声が聞こえてきそうな交代。


で、肝心の池田はというと、やはり前線での質がやや低下しているのか
アイディアが薄く、ボールを戻すシーンが目に付いた。

それでも最後まで諦めない鳥栖は
両サイド、後方からボールを放り込み続ける。

そして後半ロスタイムのCK


GK林までも上がってくる・・・・・


ニアに上がったボールは豊田の頭にピシャリ!
これがニアにそのまま突き刺さって土壇場での同点!!!


「諦めない鳥栖」が帰ってきた瞬間だった。



■まとめ
試合内容
交代策
結果
戦術

についてまとめてみよう。

■試合内容
勢いに任せての先制:◎
攻撃の連携、守備の集中:○
試合運び:×
終盤の粘り:◎


■交代策
守りきる交代:×
点を取るための交代:△
体力・調子による交代:◎


■結果
2位の広島に引き分け:○
先制しながらの引き分け:△


■戦術
守りきるための戦術:×
点を取るための戦術:○
バランスを取る:△


■選手総評
林 6.0
失点はどちらも相手を褒めるべきレベル。
ミドルシュートをしっかり弾き、最後は攻撃まで。
GKとして出来る限りのプレーを披露した。

吉田 5.5
攻守に奮闘し、対人に強い守備や落ちない運動量を見せた。
しかし、右サイドからのクロスの質に難も。
水沼との守備の連携もやや悪かった。
それでも強さは見せたが、後半は右サイドを狙われた感も。

谷口 5.5
十分な守備力、後ろに居ることでのビルドアップへの貢献。
それでも2失点の責任、そして安易なプレーでのPKの印象は悪いか。

菊池 6.0
鋭い読み、カバーと守備の安定に貢献。
攻め上がってのリスキーなプレーも、何とか崩そうと心がけた。

キムミヌ 7.0
SBに下がってのプレーでも守備の不安は殆ど無かった。
ビルドアップへの貢献、ボールが自然に集まり、
先制点のクロスも流石のキックの質を見せた。


藤田 6.5
最後の最後にセットプレーから素晴らしいボールを供給。
中盤の攻防でも、代表クラスを揃える広島に一歩も引かず。
落ち着いたボール捌きを見せた。

高橋 6.0
及第点の出来。
自分も相手も目立たせないように消すプレーに終始。
青山のゴラッソは防ぎたかったが仕方ないか・・

水沼 6.0
豊富な運動量と、技術の高さを見せるも、最後のボールがやや合わず。
あと一歩何か違いを見せてほしいところ。
それでも良い突破やクロス、シュートを披露。

ペク 5.5
これまでにないほど守備の意識も強くサイドを抉るプレーも良かった。
しかし、突破したあとのアイディアが足りずもう一歩・・・の所。
肝心なところでのミスも散見。


鎌田 6.5
18歳とは思えぬ落ち着き。前線でのキープ力を見せた。
決定的なシーンを演出する能力は広島相手でも発揮した。
またこの日は前へのプレスの勢いが良く、
周囲の予想以上の運動量と激しさを見せた。


豊田 7.5
献身的なプレス。
前線での競り合いには殆ど競り勝つ。
終盤は運動量の落ちた鎌田の分まで前線からの守備を敢行。
その中での2得点は見事と言う他ない。
高さを活かした2得点は動きの良さと、
タイミングの良いジャンプを見せた。
これぞエースという働きぶり。


早坂 6.0
ペクに変わって出場し、攻守に運動量と激しさを発揮。
求められた役割をしっかりと果たし、足りないところを埋める動きを見せた。

岡本 5.5
運動量の落ちた高橋に代わっての出場。
決定的な影響は与えられなかったが、
代わりに大きな穴も作らなかった。

池田 4.0
得点を期待されての途中交代だったが良い場面は数えるほど。
突破後のプレーの戸惑いも感じられ不完全燃焼な出来。


森下 6.0

何度も書いてるが、
勝ちきるための 準備、練習、交代、戦術、、、それを見たい。

今日のチョイス、交代も悪かったわけではなく、
崩すための動きや良い攻撃は何度も見えた。

しかしせっかく奪ったリードをあっさりと失うのは勿体ない。
守備は戦術や連携の向上で改善できる部分が多い。
つまり監督の力が一番見えるのは守備のロジック部分。

この試合では、(仕方なく、、とはいえ)運動量やスピードのある相手に
キムミヌのSBは非常に効いていた。
その分右に回った吉田をやや狙われた感もある。

また、当面はこのスタメンがベースでも良いのでは?
と思いたくなるところもあるが、
高さが特徴の相手だとSBが二人とも小さめの選手では少し苦しくなるだろう。

愚直に「こちら側の事情」で決めるのではなく
相手に合わせてのチョイスや戦術、対応がこれから求められるところ。

とは言え、この試合に限って言えば大きな忌憚を作らずゲームを進め
不運な失点も、最後まで1点差で耐えて、ロスタイムにセットプレーで追いつく。
逆転されてしまってからのプランは非常に明確であった。


■最後に

大きく変えたスタメン

 それにより変わった結果


途中から、変わらないメンバーを投入したことにより、
 
 敗北という危機を変えて 勝ち点を手に入れた。


そして何より

 「絶対に諦めない」

という鳥栖の 変わらない気持ちを見ることが出来た。



豊田のゴールはこの試合の価値を何倍にもしてくれた。



まさに The SaganTOSU!!!

This is Sagan!!


これぞ鳥栖
コレゾトス


まさに鳥栖
マサニトス


と言える試合を魅せてくれたと思う