2015年3月14日
Jリーグ第2節


鳥栖 VS G大阪 1-0(ペク)



■前提
2015年 第2節。
2014年に3冠を達成したG大阪。

去年勝てたときは宇佐美が居なかった。
宇佐美が居たときは4点を叩き込まれて敗北した。

今回は、宇佐美、パトリック、遠藤に、GK東口など
代表クラスの選手が ずらりと並ぶ。
基本的な技術やポゼッションでは圧倒的に不利だが・・・

■スタメン
GK:林
DF:丹羽 菊地 ミンヒョク ソングン
MF:藤田 谷口
MF:ペク 池田 キムミヌ
FW:豊田

第1節とまったく同じスタメン。
勝ったチームは変えない鉄則。
1週間空いたこともあるので、疲労や運動量はまだ心配ないか。

■前半
前半はG大阪にボールを持たれまくる。
早々に宇佐美にサイドを突破され、パトリックの決定的シュート。
これはパトリックのミスによりわずかにゴールを外れる。

その後も宇佐美のクイックネスに付いていくのが精一杯。
何とか止めてもDFラインから組み立てられ、
遠藤が実にいやな位置にポジションを取ってパスを回される。

鳥栖は攻めようにもロングボールを蹴るのが精一杯。
クリアが繋がらず、相手DFに余裕をもって対処される。

また、五分五分のハイボールでもガンバの選手は技術の高さから
味方に繋げるようなクリアをする。

鳥栖は攻撃が組み立てられず、豊田は孤立。
サイドからのクロスをあげようにも、
藤春、オジェソクの両SBが下がって対応するG大阪に対し、
鳥栖のSB丹羽とソングンはオーバーラップまで足が回らない。

しょっぱなの宇佐美のドリブルの印象も強く、
怖がってラインを下げて対処する。
ラインを下げて中盤もそろえることで、何とか守備は落ち着いてきたが
まるで攻撃できる気がしないまま前半を終了。

池田のがんばりやキムミヌのドリブルに比べて
ペクはまったく存在感が出せず、誰かと変えるか?と思っていた。


■後半
後半、一気にゲームが動く。
豊田がプレスの勢いを強めてG大阪のDFにプレッシャーをかけていく。
それにより、少しずつ組み立てのパスがずれるG大阪。

その豊田のキープから左サイドに繋げた鳥栖は
キムミヌが強引なドリブル突破を図る。

左サイドを一気に突破したミヌは中央の池田圭に横パス。
池田もそのまま縦に進入し、キーパーを引き付けた上で中央にパス。

これを飛び出したペクが見事に合わせて見事に先制!!
ここから圧倒的な鳥栖タイムが始まる。

豊田がプレス→DFラインにパスコースを限定する→池田が詰める→無理やりなロング。
ほかのチームならそれでもパトリックの高さでチャンスを量産するG大阪だが
鳥栖は、キムミンヒョクの高さ、谷口の高さ、菊地のカバーと、最後に林。
2重に3重に守備を構築するやり方で、G大阪の攻撃を跳ね返していく。
そして前線でのプレスでボールを奪えた場合は一気にカウンターで持っていく。

終盤はさすがに押し込まれる展開が続いたが、
菊地や丹羽のさすがのカットを見せて、
最後まで得点を許さず1-0で見事な勝利。

個人的なMVPは豊田と池田。
もちろん得点を決めたペクも素晴らしく、ゴール後は存在感を高めていた。

DF陣も粘り強く、「全員がハードワーク」というありきたりな言葉を
100%実践したが故の強さを見せて勝利をもぎ取った。


■選手総評
林  6.5 
いつも通りの安定感。飛び出しやDFとの連携もよく、キックの狙いも明確。

ソングン 6.0 
前節に比べて格段に守備が向上。最後まで食らい付く守備を披露。攻撃ではもう少しフォローが遅い場面もあったが、この攻撃力を持つ相手では仕方ないか。

キムミンヒョク 6.0
序盤は宇佐美に付いていくのが精一杯だったが時間とともに慣れていった。
終盤は執念の守備を見せ、ゴールに立ちはだかった。

菊地 6.5
さすがのポジショニング、カバー、そして勇気ある守備を見せた。
押し込まれた中でも冷静なプレーが光った。

丹羽 6.0
いつも通り素晴らしいカバーを魅せた。
クロスに対してこれだけポジショニングが正確なSBは実は貴重。
カウンターのシーンでGKを見てロングシュートを狙ったのはご愛嬌か。


藤田 6.0
セットプレーはやや合わず、攻撃面での貢献もやや少なかった。
中盤を守らせるためか、ロングスローも投げず。
だがしっかりと中盤を引き締めてプレスを怠らず、守備の強度を保った。

谷口 5.5
守備での高さと強さ、最後の跳ね返しで貢献。
しかし奪ったあとのつなぎや、クリアのヘディングがことごとく相手に渡る。
もう少し正確な繋ぎを見せたい。

ペク 6.5
池田からのプレゼントパスに飛び込み、貴重な決勝点を奪取。
前半は消えていたが後半は存在感を見せ、強さと運動量の多さを見せた。

キムミヌ 6.0
得意の突破やテクニックを披露する場面は限られていたが、
攻守に運動量の落ちない動きで貢献。

池田 7.0
豊田のプレスに連動し、最後まで粘り強い守備、
ハイボールへの競り合いに、貴重なゴールのアシストと
試合への貢献度は非常に高かった。

豊田 7.0
チームを助ける動き。
献身的なプレス、五分五分のボールを身体を張ってキープ。
厳しいところでも何とか繋ぐ。
そしてそれを90分休まず続ける。
苦しい試合展開を変えたのは間違いなく彼の働きが大きかった。

早坂 6.0 
交代の意味を理解したプレー。
中盤での運動量と守備でしっかりと貢献した。

水沼 5.5
きちんとしたプレス、しっかりとした動きは見せたが
貢献としてはやや少なかったか。
もう少し技術を発揮するシーンや時間を増やしたい。



森下 6.5
この展開の中で勝ちきったことは大きい。
1節に続いて勝負運も持っているか。

G大阪のロングボールの連続にも谷口を置いておくことで跳ね返し、
ぽぜっしょんの組み立ては豊田、池田の強さでつぶした。

後半は遠藤に何もさせず、ピンチはあるものの、
実際には鳥栖ペースとも言える試合展開で見事勝利を引き寄せた。


■追記:ペクのインタビュー
約18000人が集まった2節。
ペクは
「熱いですね!」
「この中でやれるのは楽しい」
と日本語でインタビューに答えた。

ペクが結果を残し、チームにフィットし始めたのは大きい。
まだまだ連携はこれから、と感じるシーンも多いが、
彼自身の”熱さ”も鳥栖に合っている。

試合内容(技術やポゼッション)では圧倒的に負けており、
攻撃もあまり機能しなかったが、それでもキムミヌの一芸(ドリブル)で
ゴールを奪いきった。

そして守備は文字通り 全員がハードワークすることで防ぎきった。

今年も旋風を起こすことが出来るとしたら、
今日のような試合で
我慢し続けること、我慢比べで集中を切らさないことが大事だろう。

そして、それこそが、鳥栖がもっとも得意なことである。

なぜならば、今日の前半のように
相手のほうが圧倒的に上手く、もう無理かとサポーターですら思った試合でも
サガン鳥栖の選手は誰一人諦めてなどいなかったのだから。





■試合ハイライト:
序盤は宇佐美のクイックにまったく付いていけず不安だらけの立ち上がり。
早々の決定機のほかにも遠藤が嫌な位置でボールを受けて、パスを回される。
遠藤のポジショニングと、プレスが来たらバックパス、
来なければ前のフリーな位置に渡す、という
単純ながら”効いた”プレーをされていた。

DF陣の足元の上手さもあり、いくらでもつながれる、という前半。
しかしここを乗り切ったのが大きかった。

鳥栖は後半、遠藤にほとんど仕事をさせず。
またしても、”我慢比べ”に勝ち切った。

後半の鳥栖は豊田、池田が激しくプレスに行き、
CB二人と遠藤に対してのプレスを強めることで無力化に成功。

さらに後半早々にキムミヌの強引な突破から池田がつなぎ
冷静に流したところでペクが走りこんで先制。

あれだけ上手いと感じたG大阪の選手がプレスに焦りミスを連発。
失点した焦りもあって、「ボールを持ってる」状態から
「ボールを持たされている」状態に変わった。
この変化はスタジアムで見ていて感じるほどの圧力だった。

と同時に、日本でもっとも上手いであろう遠藤らが
この程度のプレスで無力化されるのを見ると
日本代表がフィジカルに押されると途端に弱くなるのも頷けた。

「巧い」といわれる選手であっても
プレスがある中で、その巧さのうち何%を発揮できるのか?
これこそが、その選手を評価する基準となるべきだろう。

豊田、池田は90分を超えてもプレスを緩めることなく、
後半の最後には、G大阪がロングボールの放り込みを敢行するも
しっかりと跳ね返し続けて完封。
鳥栖の池田などは、巧さで言えば遠藤の半分程度だろうと思われるが、
プレスの中でも変わらない技術を発揮できる。

その意味で、試合を決定付けたのは遠藤ではなく池田だった。

また、最後の時間帯の菊地の恐ろしいまでの冷静さと
クロスに対するポジショニングのよさ、
そして丹羽の冷静なカバーが非常に光った。

特にハイボールに飛び出した菊地が
すっと身体を入れ替えて、相手の逆をとって
ボールを奪い取ると同時に相手と入れ替わってキープしてしまったシーンは
菊地のセンスのよさ、判断力の高さを感じ鳥肌が立つほどだった。


■鳥栖の現状
攻撃:
中々試合に入れなかったペクが後半フィットし始めたことは好材料。
得点も生まれ、今後に期待が持てる。

左サイドの崩しも少しずつ形になっているが、
やはりソングンのフォローの遅さがキムミヌの足枷となっているか。
攻撃に期待しずらいとは言え、控えの吉田はより守備的な選手。
右はペクと水沼、丹羽との関係はいつも通りなので、
より攻撃に出る場合は、水沼を右に回して
キムミヌのSBという、昇格時のフォーメーションを試すのもいいかもしれない。


守備:
谷口の守備力に異論はないが、奪ったあとのロスと率は気になるところ。
また、菊地、キムミンヒョクが磐石なのは良いが、
控えにCBが一人もいないのは心配。

怪我や累積などで出られないときにどうするのか?
谷口や岡本のCBも試せるなら試しておきたい。
小林も怪我で出遅れてるため、
指定強化選手としてCBの選手を登録したのはこのためか。

調子が良いとは言え、やはり勝利は紙一重。
相変わらずギリギリの状態であることは間違いない。