【欧州チャンピオンズリーグ 決勝】
  ~2008年5月21日

 マンチェスター.U VS チェルシー (1-1)

■雑感
決勝の1発勝負という緊張感と、双方が疲労を抱えた中での試合ということで、エンターテイメントとして楽しめる試合ではなかった。
だが、そんな中でも120分間を通して「組織的守備」が破綻する事は無く、ハイレベルな緊張感のある試合となった。

とは言え、90分過ぎる前から世界最高の選手であるはずの両チームの選手が、筋肉疲労や足がつるというシーンが見られた。
これは現代サッカーの過密スケジュールによる弊害と、限界を見た気がした。
語られるべきは「足がつるほどまでに走りまわった素晴らしい試合」という美談だけではなく、
試合自体のレベルが低下してしまうほどの過密スケジュールを懸念することも必要だろう。

特に欧州各国代表の選手達はこの後すぐにユーロが始まる。
モチベーションの維持、疲労の回復など、戦うのは相手チームだけではない。
レベルの高い選手ほど、こういう弊害に悩まされるわけだ。
良い選手ほど、多くの試合で見たいものだが、そのおかげで本来のプレーが見れなくなるのは本末転倒だろう・・・

■前半(1-1) マンチェスターの攻め
先発は、ベストに近いメンバーだが、驚きは中盤にあった。
キャリック、スコールズをボランチに配し、C.ロナウドを左、ハーグリーブスを右に置いた4-4-2。
最近活躍していたパクチソンは残念ながらベンチにも入らなかった。
これはやや驚きの采配だったと思う。
2TOPはルーニー、テベスの凹凹コンビだ。

対するチェルシーは4-3-3。鍵となると思われるエッシェンは右サイドバックだったが、彼は自由に動くだろう。
中盤はマケレレ、ランパード、バラックのトライアングル。FWはドログバを中心にJコール、マルダという布陣。

前半、まずペースを握ったのはマンチェスターだった。
ハーグリーブスが何度も右サイドを往復し、クロスからチャンスを伺う。
Cロナウドやルーニーは身体が重いのか、いつものようなキレは見られない。
特にCロナウドのファーストタッチの荒さは目についた。
前半にロナウドが作ったチャンスは2度。
一度目は左サイドでエッシェンを置き去りにしてセンタリング。
これは惜しくも合わなかった。
そして2度目は右サイドからのセンタリングに飛び込んでの先制点。
こうしてマンチェスターは思ったより容易に先制点を上げることに成功する。

チェルシーはやや守備中心で相手FWにボールが入るとボランチとDFとで挟み込み、キレイな2ラインで組織的守備を披露。
この守備はかなりハマっていたのだが、クリスチャーノ・ロナウドの飛び込みへの対応の甘さで手痛い失点を食らった。
その後もルーニーの超ロングパスからC.ロナウドが抜け出しテベスへセンタリング。
スライディングシュートはGKに阻まれ、こぼれ球をハーグリーブスがシュート!
だがこれはGKチェフがファインセーブを見せた。

チェルシーは守備陣の頑張りが目立つものの攻撃では手数が足りない印象を受けた。
Jコールは孤立し、ドログバはキープが精一杯。
バラック、マケレレ辺りは中盤の深い位置で比較的フリーで居たが、前線に人数が足りず、M.Uの組織的守備も見事だった。
だが、前半終了間際、前半初めてといっていいオーバーラップを見せたエッシェンがミドルシュートを放つ。
当たりそこないのボールはファーディナンドの背中に当たり、ランパードの目の前へ・・・
GKファデルサールが若干足を滑らす不運も重なりランパードが同点ゴールを上げた。
チェルシーにとっては絶好の時間帯に追いついた形。
そして前半終了の笛を迎える。


■後半 チェルシーの反撃
メンバーは互いに変わらず。
後半はうって変わってチェルシーが攻勢を見せる。
同点ゴールの勢いから、エッシェンが何度もオーバーラップを見せ、Jコール、ドログバと絡みながらチャンスを作る。
シュートシーンも増え、ドログバのミドルシュートがポストを叩くシーンもあった。
シュートは後半だけで10本以上を数え、セットプレーでもチャンスを得た。
マンチェスターの方は一気に失速。
頼みのCロナウドも運動量が落ち始め、攻撃の形が作れない。
テベスが相当に奮闘し、前線でのキープからシュートにいたるまで孤軍奮闘していた。
後半のM.Uのシュートは殆どがテベスのミドルシュートだけであった。

だがチェルシーの攻めも、最後の所でM.U守備陣が踏ん張って無得点。
後半、ギッグスを投入したM.Uだったが見せ場は少なく勝負は延長戦へと突入した。


■延長戦 チェルシー優勢ながら・・・
延長に入って疲労が目立ち始めた両チーム。
こうなってくると、精神的に強いチームが強い。
M.Uも最後の力を振り絞りチャンスを作る。

エブエの突破からマイナスの折り返しでGKを完全に外したギッグスのシュートは、チェルシーのキャプテン テリーのヘディングで間一髪クリアされた。

チェルシーもゴール前でのパス交換からランパードが振り向きざまの左足のシュート!
キレイな弧を描いたシュートは無念にもゴール右上のクロスバーを叩いた。

ややチェルシー優勢ながら、互いに決定機を迎えながらもノーゴール。
そして延長後半には揉みあいの中で相手選手を叩いたとしてドログバが退場。
残り2分。チェルシーは守りに終始して試合終了を迎えた。


■PK戦 主役が… 
PKの戦評など、書くべきでも無いが、GKだけならチェルシーの方が上だろう。
こういう試合は活躍した選手、Keyプレイヤーが外す。(Cロナウドか、ランパードが外すだろう)
勝負は1本でも外したほうが負けるだろう・・・などと考えていた。

そして見事なまでにドラマティックなPK戦が始まった。

1本目、テベス、バラックがともに落ち着いて決めて 1-1
2本目もキャリック、ベレッチが比較的ノープレッシャーで2-2
3本目、、、そろそろプレッシャーがかかる中で Cロナウドが登場・・・
助走し、GKを見ながら一度ストップ、、、だがチェフは慌てていない。
そして迷った末のキックはコースが甘くチェフがセーブ!
対するチェルシーはランパードが鋭いシュートを決めて2-3
チェルシーがリードした。
ファンデルサールは、読みが合わず、合っていても届かない状態でセーブは厳しい、、、と思った。

4本目、、、ハーグリーブス、アシュリーコール共に決めて3-4
絶対絶命のマンチェスター。
5人目はナニ・・・この重圧がかかる中できっちりとゴール!
チェルシーの5人目はJテリー・・・ここまでキャプテンとして引っ張ってきたテリー。
ファンデルサールは拳を叩いて気合を入れる・・・

テリーの放ったボールはGKの逆へ・・・チェルシーの優勝が決まるはずだった瞬間、、、
芝に足を滑らせながらのシュートは無情にも枠の外へ。
4-4の同点となる。

6本目は互いに難なく決めて5-5
7人目、、、M.Uは大ベテランのギッグス。
さすがのシュートで6-5とリード。
チェルシーのほうも最近加入したベテランのアネルカ。

誘われるようにGKが飛んだ方向へボールは向かっていき、この瞬間マンチェスターユナイテッドの9シーズン振りの優勝が決まった。


■終焉
CロナウドはPK失敗の悪夢から解放され泣き崩れる…
ナニは踊りまくりルーニーは拳を突き上げて喜びを歌う。

ランパードは自軍の戦いぶりに納得していたのか胸を張って去っていく。
テリーは崩れ落ち、監督に支えられていた。

それぞれの場所でそれぞれのドラマが終わった。

チェルシーは手に仕掛けた栄冠をまたも逃してしまった。
ランパードの願いも届かず、無念のプレミアリーグ、CL ともに準優勝。
それでも最後まで走り続けた両チームに感銘を受けた人は少なくないだろう。

マンチェスターは見事2冠。
黄金期を迎えたと言っていいだろう。


これで今年もCLの激闘は幕が降りた。

またも手が届かなかったチェルシーの来期の方針や、スペイン、イタリア勢の巻き返しを期待しつつ、また来年を楽しみに待とう。
その前にスコットランド SPLの最終節や ユーロなど サッカーの楽しみは尽きない。