ロシア - オランダ (3-1)

■前置
グループリーグを全勝で勝ち抜けたオランダ。
圧倒的な攻撃力を見せ付けてきた。
ここまでポルトガル、クロアチアといった有利が囁かれていたチームが敗退してるだけに、強豪の意地を見せたいオランダ。

ロシアのほうは緒戦のスペイン戦に大敗するも、名将ヒディングのもと建て直しを図り、強豪スウェーデン相手に完勝して調子を上げてきての1戦。
組織レベルはかなりの高水準にあり、復帰した10番アルシャビンら個の非凡な能力も持ち合わせたチームになっている。


■総括
個のチカラで勝るオランダが序盤はボールをキープする。
球際での当たりではオランダに分があり、こぼれ球を拾う確率はオランダのほうが高かった。
ロシアのほうは、この不利を補うために運動量と激しい守備で対抗。
だが、ややファールになる場面も多かった。
そして、セットプレーでキックの精度の高さを見せたオランダが何度か決定機を迎える。
中でもファンデルファールトのキックは高精度で、あと一歩でゴール!というところまで来ていた。

ロシアのほうは運動量と正確なパスで崩しにかかり、徹底して サイドをえぐり、低く 速いパスをゴール前に入れる、というチームコンセプト。

このGKとDFの間に速いパス、というのは常套手段だが、かなり有効である。
だが、個の能力ではやや劣るロシアはチャンスを作るものの決定的とまでは行かなかった。
だが クリアボールを献身的に拾い、ミドルレンジでも吹っ切れたロングシュートを連発するなど、互角の展開を見せる。


■ロシアの個の能力
後半、FWパブリュシェンコが体格では劣るものの正確なコントロールでポストプレーを見せる。
そして徹底してきたサイドからのクロスを押し込みロシアが先制。
組織プレーが注目されるロシアだが、彼とアルシャビンは個でも対抗できるタレントであり、彼らの能力が生かされた瞬間であった。

オランダはやや焦りが見え始め、グループリーグで見せたようなワイドな展開が影を潜めた。

ロシアは2点目を狙い、攻撃を繰り出す。
一進一退の展開ながら、このまま1-0で終了かと思われた終了5分前。
この日冴えを見せていたセットプレーからファンニステルローイが頭で押し込み土壇場で同点!

試合は延長戦に突入する。


■ロシアの底力
延長戦は、ロシアの独壇場だった。
運動量が落ちないロシアは何度もサイドを突破する。
GKと1対1の場面から マイナスの折り返しをぎりぎりでクリアされる、というシーンや、ミドルレンジのシュートがクロスバーをたたくシーンもあった。

オランダのほうは決定機を作れず、ボールをキープできるものの単調な攻めに終始していた。

そして延長後半。
さすがのロシアも運動量が落ちてきた時間帯・・・
カウンターからアルシャビンがドリブルで切り込む。
周りのサポートも薄く、ゴール前も交代で入ったトロフスキーが走りこんでるだけ…

「ここは俺が行くしかない!」

そんな声が聞こえるほど、吹っ切れたドリブル勝負に挑むアルシャビン。
一瞬のストップ&ゴーから左サイドを突破すると、今までこだわり続けた低いクロスではなく、GKの頭越しの高いセンタリング!

ここまでファインセーブを連発していたファんデルサールは、ほぼ初めてのハイボールに判断を誤り、完全に裏を取られてしまう。
そこに走りこんだトロフスキーが、見事なコントロールで左足アウトサイドでゴールに流し込む!

見事な展開から勝ち越し点を奪う。

落ち込むオランダを尻目に、今度はスローインから今度は10番アルシャビンが抜け出しGKの股を抜くゴール!

3-1 となり勝負あり。


ロシアはオランダのお株を奪うような全員サッカーで見事に完勝。
完全に力負けしたオランダはここで敗退となった。


■後書き
ロシアは全員サッカーで今日も素晴らしいサッカーを披露した。
控えの少なさから疲労が心配されるが、この勝利でロシアサッカーとはこうだ!というメッセージを全世界に向けて発した。
もし次負けたとしても充分に成功した大会だったと言えるだろう。

オランダはグループリーグで見せた攻撃を完全に防がれた。
運動量で勝るロシアに挟み込まれ形が作れなかった。

困ったときは個に頼る悪い癖は抜けきれず残念な敗退となった。
グループリーグで全勝したチームはそろって敗退となったが、今日はイタリア-スペイン。
スペインもこの流れに乗ってしまうのか?
それとも、ジンクスを崩すのか・・・

今日も楽しみだ。