U-17 W杯 GL第3戦 日本 VS チュニジア (2-1)

■前提
前の2試合で連勝した日本はGLの勝ち抜けを決めている。
ただ、1位通過とそれ以外ではその後の組み合わせもあるので
ある程度は勝ち点を意識したいところ。

そもそもこの吉武監督からしたらそんなことお構いなしに
「チームの成長」と「3試合トータルでの経験」しか考えてないと思う。
ある意味ドライかつ、ドラスティックな監督。

育成世代であるが故に、ゴール中央にけってたまたま入るシュートより
隅を狙ってはずす方を褒める。
そして、「練習して、この大会中に決定力は上がるのか?」という質問に
「それ(決定力が上がる)は10年後でいい」と言い切る。

かなり視野を広くもった監督だと感じている。

■前半
これまでの2試合と同じようにボールを保持するのは日本。
だが、決定的に違うのは、チュニジアのボールへの寄せ。

縦パスが入ったらすかさず距離を詰めて、激しいボディコンタクトにより
楽にはプレーさせない。

これまでの試合であれば、そこでも反転したり、
中央のフリーのスペースを見つけて繋げていたところが
少しずつプレッシャーに押されてバックパスが増える。

それにより前に行くスピードも落ちて、相手に陣形を整えられてしまう。
結果として、スペースを突いたり、相手の裏を取るという攻撃は
非常に少なかった。

チュニジアは
・縦パスが入る→ボールホルダーにプレッシャーをかける
・バックパス→ラインを上げてプレスが掛るよにコンパクトにする。
・それでもサイドの高い位置でキープされる→ラインを下げて2ライン(4-4)で守る。

これを非常に徹底していた。
攻めるスペースは非常に限られていた。

こういうとき、有効なのはミドルシュート。
ベネズエラ戦では頻繁に見せていたミドルシュートだが、
ミドルが得意な仲村(前半で交代)、杉本(前半途中から出場)の出場が短かったこと、
瓜生、渡辺ら、ミドルの威力を持っているが、あまり打てなかったこと、
により、ミドルシュートは非常に少なかった。

ペナルティのやや手前のゾーンで、常にパスを選択してしまったことで
相手にも守りやすい状況を与えていたと言える。

それでも押し切る力はさすがだが、逆にチュニジアのポストプレーから
目の覚めるようなミドルを叩き込まれて0-1で前半を終える。


■後半
こういう押し込めきれない展開、さらにリードされたときの反発を見たかったので
この展開は個人的には願ったりの状況。

どうしても点がほしいときにどうするか?
今まで通り冷静に相手の空いてるところを突けるのか?

結果から言うと、この課題は持ち越しとなった。
バイタルまでは運べるが、そこから先、ややフリーでボールを持ててる時に、
どうしてもサイドや縦へのパスを選択してしまう。

それがもっとも得意な形、というのもあるのだろうが、
左のウイングの渡辺が早く中央に入ってしまい、横の幅が出ない。
これはA代表の香川・岡崎問題と類似してる。

そこで左SBの(後半からは)坂井が長友のように上がれれば問題ないが
攻守にあれだけの活躍ができるSBはさすがにそんなには居ない。

日本の攻めの問題点は

1)CB、ボランチからの縦パス→○
それなりに通せていた。
ビルドアップの正確さは素晴らしい。

2)バイタルでのミドルシュート→×
あまり打てなかった。
せっかく技術があるのだから打ってほしい。

3)スルーパスに固執→×
ミドルを打てていたら裏のスペースも空いたかもしれないが
スペースを消されたなかで無理にワンツーやスルーを狙って
ギリギリでクリアされるシーンが多かった。

4)バイタルでのドリブル→×
中央付近でフリーで持ててるときに
もう一歩二歩前にドリブルで運ぶ、
それにより相手選手をもう1歩2歩、自分のところに寄せさせる。
その後にサイドにパスを出すことでサイドの選手は少しだけ余裕が持てる。

この「少し」の気遣いが非常に重要で、A代表だと遠藤、本田あたりが
何気なくしてるパスがこういったことをしている。
(遠藤は相手を引き寄せすぎて危険なときもあるが)

この気遣いがなく、自分のほうがややフリーなのに
早目にサイドに展開してしまい、相手の運動量もあって
サイドで数的優位で守られるケースが多かった。

キープ力やドリブルのうまさで打開する場面もあったが
やはり数的不利の状況では分が悪い。
ボランチからの展開はここをもう少しだけ意識することで
大きく変わるだろうと思った。


■同点、、、そして
だが、それ以上に、日本が3)を執拗に狙っていたことによる利点が一つ生まれた。
それは、チュニジアの運動量。
ボールホルダーに素早くチェックを寄せても
バックパス、またはサイドにつながれて、
何度となくスルーパスを狙われる。
そのたびに全力でラインを下げて対応する。

これでは終盤足がつるのも無理はなかった。

そして最後はそのスルーパスが坂井に通り、
クリアがもつれたところをポストに当たりながらもゴールへ…

チュニジアは勝利の女神からそっぽを向かれた瞬間だった。

幸運なゴールを見て、これは逆転もあるな、と思った矢先、
10番水谷が左サイドを駆け上がりここにスルーパスが通る。

その折り返しをもうすでに最初から中央にいた
「左FW」の渡辺が詰めて2-1。

見事な逆転ゴール。
そしてスルーパスにこだわり、それでも突き崩した日本。

書き足すと、左サイドから「早目に」中央に行き過ぎていた渡辺の位置を
交代で出た水谷がしっかりと埋めてそこのスペースを活用したことは大きい。
SBの坂井が上がりきれないシーンが多かっただけに、
こういう戦術眼をもった選手は息が長いと思っている。

ボールポゼッションは70%近くになり、またしても圧倒した。
だが前2試合ほど相手を圧倒した感じはなく、
非常に厳しい戦いを制した、、、という印象。


■個人的にチェックしたい選手
6番 中野
アンカーからCB、前に出たらウィング的な動きまで非常に能力が高いと感じる。
サッカーセンスを感じた選手。
チアゴアルカンタラのような雰囲気、、といったら言い過ぎか。
つねにチームで足りない位置にポジションをとり、正確なパス技術で前につなぐ。

8番 杉本
ボールテクニックがあり、かつ前を向くスピードが速い。
細かいドリブルとミドルも打てて攻撃の万能。
本当にミニ香川を見てるよう。
左右遜色なく使えるのも素晴らしい。
ビルドアップからフィニッシュまで幅広く絡める選手。

7番 仲村
独特のセンスを感じる選手。
ベネズエラ戦のダブルタッチからのスルーパスや
縦パスをいちいちノールックで出すあたり憎い。
ミドルもあり、左利きということもあって独特のリズムを持っている。
チュニジア戦の苦戦は後半彼が退いたことも一因だろう。

11番 渡辺
攻撃の際のサイドでのドリブル突破。
相手の重心の逆をとるフェイント。
ミドルシュートの威力(重いシュート)
スタミナとスピードと決定力。
攻撃のファイナルサードで活きる選手。


これから決勝Tだが、勝ちきった経験は大きい。
そしてまだまだ楽しみな U-17W杯。

さらなる飛躍を期待したい。