日本 VS メキシコ 1-2


■前提
コンフェデ杯 第3戦目。
1,2試合目を落とした日本は、リーグ敗退が決まっている。
だが、それよりも世界の勝負の場で勝てるのか?
イタリアに善戦した内容は本物か?
それが問われる試合となった。


■スタメン
出場停止の長谷部に代わって細貝。
最大の変更はDF陣。
内田に代わって酒井、
吉田に代わって栗原が起用された。


川島
長友 今野 栗原 酒井
遠藤 細貝
香川 本田 岡崎
前田


■1.イタリア戦のように戦えたのか?
イタリア戦のようにアグレッシブに戦えば勝てる。
そんな雰囲気が日本国内にはあったと思われる。
結果として惨敗したことで、内容を含めてダメだったという結論になりそうな気がする。
イタリア戦のようには戦えなかったという論調になるのは危険。


結論から言うと、この点に関しては「YES」である。
攻めるべきときに攻めて、シュートまでいく、攻めきる、そういうことは出来た。
その代り、守るべき時に耐えきれない。
世界の強豪が本気で点を取りにきたときにはまだ耐えられない。
日本の現状がそのまま出た試合だったと言える。

つまりやれることは出し切っての結果ではないか?


■2.このサッカーで良いのか?
この形の限界ともいえるし、守備陣がこのレベルを体感することで
レベルアップする可能性もある。
また、本番では少しの運が向いて守りきれるかもしれない。
ボランチの守備力が足りないのは明白。


どのみち、今の日本が世界で勝つには少しの運が必要になる。
南アフリカW杯でも、守備を強固にしたと言っても
点が取れるほうに多大な運が必要だった。


今の形は点が取れる可能性は高いが、
守りきるほうに多大な運が必要となる。

どちらに賭けるかは自由だ。
ザックは後者を選んだ。
それを支持するかしないかは僕ら次第なだけである。


■試合を振り返る。
メキシコ戦が酷評の対象にならないように。
繰り返し言っておく。
まだまだ弱い日本は何度でもこうやって経験して
世界との距離を測りながら失敗し続けて成長するしかない。


去年のブラジル戦で世界との距離は分かった
次は勝負すべき、、


そんな意見も聞こえるが、そんな簡単に「あーわかった」とはならない。
選手1人が分かっても、チームとして、また最終的には国として自分たちの位置を理解し
前に進もうという意識を持つには何度も何度も打ちのめされる必要はあるだろう。


そしてメキシコ戦だが、イタリア戦のように戦えていた。
ただ、イタリアよりもメキシコのほうが日本対策を考えていた。
よりしたたかだった、その違いだと思う。


■前半
それでも日本は前半20分過ぎまで完璧なサッカーを見せる。
よりスケールアップした岡崎の動き、守備での粘りを元に
右サイドを制圧。
酒井もぎこちないながらもチームにはなっていた。
クロスは残念だったが。


そして何よりも本田のキープに加え前田も素晴らしい動き、キープ力を披露する。
岡崎のボール奪取から前田、香川、長友と絡んでさらに香川がPA内に突進したシーン。
あれだけ狭い局面を崩してGKとの1対1で惜しくも決まらなかったが素晴らしいシーンだった。

また、その後も中盤のつなぎからこぼれたところを遠藤がミドルシュート
それを岡崎が少し触ってゴール!!!
となったがオフサイドで取り消されてしまった。

正直これはオフサイドではなかったと思う。


運が向いていれば決まっていた、崩し切った、それだけの攻めは見せた日本。

その後ややキープされる展開が続くも、本田のシュートなど、
前半はかなりの部分で圧倒した。

ただ、終了間際になって酒井のゾーンを崩されてのクロスから
フリーでヘディングを打たれる!
これは惜しくもポストに嫌われ、日本が今度は助かったシーンもあった。

だがおおむね前半は支配した展開となった。


■後半
後半、メキシコはギアを入れ替えてきた。
前からのプレスを強め、日本のボランチにプレスをかける。
今日のDFは吉田がいないため、パスを縦に入れる選手が少ない。

つまり遠藤が縦パスを入れれない形にすれば攻めにならない。
個人でサイドを突破する、また少ない人数で攻めきることは想定していない日本は
SBのオーバーラップ、中盤の押し上げをしない限り攻めれない。


横パスが増え、カットされるシーンが増える。
メキシコの試合巧者ぶりが発揮される。
それでもこのハイプレスはずっとは持たない。
15分、せめて10分耐えきればまた日本の時間が来る、、、と思っていた矢先に
エルナンデスに見事なヘディングを決められる。

イタリア戦での失点もそうだが、準備していないときに日本の守備は極端に弱い。
まだ来ない、このタイミングではない、そういう準備不足のときに失点する。
そして、世界では日本が予想できないタイミングから決定機を作り出す。


これは何度も体感して失敗を重ねるしかないのだ。
そして強者が本気で攻めにきたときに失点するという形はかわらなかった。
まぁこんな短い大会の途中から急に強くなるわけはないので当然といえば当然。


日本は動きのあいまいな酒井に代えて内田。
さらに前田に代えて吉田を投入。


前田は非常に効いていただけに微妙だったが、
まず酒井の守備でのアプローチの弱さは気になった。
成長を促したいのだろうが、まだスタメンレベルではない。
なのでこの交代で守備を安定させたかったのだろう。


また吉田の投入も納得はいく。
背の高い選手を並べて日本対策をしてきたメキシコに対して
栗原、吉田を並べて対抗する、FWを削ったのは微妙だが
どちらもこれ以上の失点は何としても防ぐ。
あとは好調な攻撃陣がどこかで1点取れば、、というゲームプラン。


だが日本はそういった柔軟なゲームプランを持てる経験がまだない。
ザックはそこだけは過大評価しているかもしれない。

途中出場の内田は試合に入りきれず得意のはずの守備のカバーリングもうまく行かない。
また高さ対策したはずの吉田投入後にCKから失点。

これ以上の失点の可能性を極力減らすはずの交代だったが
選手は答えられなかった。


だが、ここで終わらないのが今の日本の「強さ」だとも思う。
香川、岡崎を中心に何とかしよう、何とか反撃しようと動き続ける。

中でも香川のドリブル、キープ力は群を抜いていた。


本田中心で来ると思っていたメキシコは彼に相当手を焼いていた。

そしてその香川の細かいドリブルから逆サイドの遠藤へ見事なクロス。
その遠藤が折り返して岡崎がゴール!


1-2!


反撃ムードの中、今度はエルナンデスが内田とうまくモツレテPKを奪取。
微妙な判定だったがエルナンデスの巧さ、、ということか。

しかしこのPKを川島が見事なセーブ!

何とかあと1点をとって引き分けを、、、と粘るも
1-2で終了。


■爪痕は残せたか?
確実に世界に対して爪痕は残せた。
試合後の日本コールも決して社交辞令ではないだろう。


逆にいえばあのコール、応援はつまり

「世界へようこそ」

と日本を認めた証でもある。


これからはそれなりに分析され、それなりに真剣に戦う相手として。

つまり、今まで以上に強豪に勝つのは難しくなる。
それでもあえて言おう。
未来はある、と。


では、なぜ押し返されたか?
1つは先制点が取れなかったこと。
攻めきることを標榜して点を取れない時間が長引けばこうなる。
逆に前半の岡崎のゴールが認められていればまた違う展開になっただろう。
そのくらいメキシコ戦は勝つか、負けるか、という勝負は出来ていた。


また、もう一つは早い攻めに苦しんだメキシコが
ファールをもらう動きを増やしたこと。
それにより時間は切られ、日本の守備は激しく当たりづらくなり、
さらにセットプレーという弱点を晒すことになった。

本当にメキシコはいいチームだ。


カメレオンのようにチームは表情を変えて戦い方を変えてきた。
それだけ日本を見くびってなどいなかったのだと思う。

この経験は確実に糧になる。


日本も決して何も残らない戦いなどではなかった。

対戦相手が決まったとき誰もが思ったはずである。
3戦全敗もありうる、と。
イタリアに万が一でも点が取れて、
メキシコに、勝てるかも、、という試合ができて
いろんな経験ができればいい、、、
そのくらい強い3チームだ、と。


まさにその予想通りの結果になったに過ぎない。
得るものはものすごく大きかった。


■選手総評
川島 6.0 
PKストップは勢いを生んだ。だが先制点のシーンはもう少し準備していれば防ぐこともできた。
セットプレーの守備を含めて守備エリアが狭い印象がある。


長友 4.5
怪我の影響か、後半はまったく動けず。
前半は効いていただけに本番までにしっかりと治すのも仕事


栗原 5.5
安定した守備を披露。対人戦にシュートブロックと良い守備を見せた。


今野 6.0
地上戦ではメキシコ相手にも強さを見せた。
カバーリングの速さは流石の一言。


酒井 4.0
今までよりはソツなくチームに馴染んでいた。
だが、攻守に最後のクオリティが低く、価値のないクロスと
強さのないプレスを繰り返した。


遠藤 6.0
相方が細貝になった影響もあり攻撃的に振る舞い、起点となった。
ケアされると消えてしまうのは悪印象。


細貝 5.0
対人の守備ではそれなりのものを見せたが、
エリアのカバー、特に右サイドの酒井のカバーが足りず決定機を許した。


香川 6.0
後半の最後はバテたが、脅威のあるドリブルと狭いエリアでのうまさ、
そして技術の高さを見せつけた。
彼がボールを持つとメキシコをパニックに陥れた。


岡崎 6.5
間違いなく今大会のMVP。
この試合でも攻守にアグレッシブな運動量、そしてらしからぬ技術の高さも見せた。
シュートにいくアイディアが少ないが前半、後半ともに決定的チャンスを作り
本来なら2ゴールを奪っていた。
加えて守備での粘りもみせ攻守に誰よりも奮闘した。


本田 4.0
今日はガソリンが切れていたようだ。
長友のクロスを空振りしたシーンや簡単にボールを失うなど
らしくない面をのぞかせた。
怪我やスタミナの影響だろうが、脅威になれず。


前田 6.0
最前線でのポストプレーをメキシコ相手にも通じるところを見せた。
シュートの意欲も上がってきており、非常に効果的な動きを続けた。



内田 4.0
交代で入る選手ではない。終始ポジショニングが不安定で試合に入れず。


吉田 4.0
高さをもたらすための交代だったはずだが、期待に応えられず。


中村 5.5
前へのパスの意欲を見せた。


■最後にザックについて、、、
スタメンでの強さは築いた。
しかもこれまでにないほどの強さを。

サブの強化や別フォーメーション、交代策など課題は山積みではあるが、
ベストメンバーが元気ならこれだけの試合ができるチーム。
そんなチームを簡単に作れるとは思えない。
ここは彼の功績を認めるべき。


交代については彼の思い描くプランに選手が付いていけてない様子。
イタリアのように戦術的に長けてるわけでも器用なわけでもない。

もう少しはっきりとした「攻めるときの交代」「守りきる作戦」としたほうが
日本には合っていると感じる。


勝負にこだわる部分、交代策、サブの底上げ、やることは多い。
ここはしっかりとメディアを含めて「指摘」をし、課題を克服していったほしい。

今の時点で監督を替えることにメリットは感じない。
彼を見守り、今回のような内容のW杯になったとしても
得るものは大きいのではないか?


はっきり言いたい。
日本はまだ弱い。

だがこれだけの成果を残せた。

今回のコンフェエ杯は事前に描いた「経験」を持ち帰ることができた、と
総括しても良いと思う。