本日は…風花美優さまのお誕生日ー!
お誕生日プレゼント、一年遅れてしまったので目に届かないかもしれないけれど(´・ω・`)
遠くから、美優さんの素敵な一年を祈っております。
とある音楽からのインスピレーション!で書いてます。
結末は全く違うのですがw
わかるかなー?w
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『悪い、今日中に戻れそうにない』
高杉さんからの電話に
『わかりました…』
『仕事だもん、しょうがないですよね…』
小さな不満を声色に纏わせる
『…なんだ、寂しいのか?』
少しだけ機嫌のよさそうな声になる
…人の気も知らないで
『別に…寂しくなんてありません』
電話の向こうで
にやりと笑う彼が容易に想像できて
『…おやすみなさい』
それだけ言って、電話を切る
…今日くらい、時間を守ってくれたらいいのに
一年に一度の、誕生日
そして、私にとっては、もう一つの記念日
一年前の今日
仕事場のミーティングと称した飲み会
残務で遅れた人事部の私と
時間通りに来ない事業推進部の彼は
エレベーター で一緒になった
『あ、高杉さん…お疲れ様です』
『………美優か』
『久しぶりだな』
胸元を着崩したシャツの袖口のボタンを外しながら
こちらに視線を向ける
その視線にどきりとして
数字がくるくると変わる表示板を見つめて
『…そうですね』
『お久しぶりです』
そう返すだけで、精いっぱい
高杉さんが一歩近づけば
わたしが半歩逃げる
また、一歩彼が近づけば
また、半歩逃げる
そんな微妙な空気の中で
狭いエレベーターの隅に追いやられる
もう逃げ場がない
その時丁度
目的の階に到着する
『つ、着きましたね!』
狭い空間で…高杉さんと二人きりなんて
心臓が壊れてしまう
そう思 って
先に出ようと一歩踏み出せば
手首を引かれて
エレベーターに戻される
彼の右手は
【閉】のボタンを押していて
そのボタンのすぐ近くの
【1】の数字が既に光っていた
『美優』
『行くぞ』
『え、ちょ、ちょっとまって…』
そう言ったのと
ドアが閉まるのは同時で
ドアの閉まった瞬間
彼にキスされる
それから
私たちは…決定的な言葉をもたないままで。
彼と過ごす時間が増えて
彼に溺れるように嵌っていった
だけど
彼との時間が積み重なるほどに
どんどん彼が解らなくなる
掴めそうで掴めない
なのに
自分はぐるぐると抜けられない迷路に
捕まっているような
赤い糸を信じてるなんて
もう、そんな夢 見がちなこと言えないけど
赤い糸にすがりたくなるほどに
彼は自由だ
誕生日を祝ってほしいなんていわない
私にとっては、高杉さんとの日
なのに、そんな風に思ってるのは私だけなのかな
窓の外で
雨の音がする
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女に何をすればいいのか
女が何を求めているのか
手に取るように解っていたのに
惚れた女に何をすればいいのか
惚れた女が何を求めているのか
思っていたよりも難しい
急に降り出した雨に
傘がない
明日を誓えるのは美優だと
伝えるすべを持たない
日付が変わる
ぎりぎりの時間帯に
彼女の家の近くの駅に着く
そこには美優が立って いた
『おい…!』
『あ、高杉さん…』
『戻れそうにないと言っただろうが…』
『よほど俺が恋しいようだな?』
いつものようにからかって
それでも、愛しくてたまらない
…きっと不安にさせているだろう
でも、からかって
頬を染めたり、起こった素振りをしたり
眉を下げたりするところが見たい
『違いますよ』
『…傘、ないかなって』
少し不機嫌そうな表情の彼女を見下ろして
差し出された傘を受け取る
それをささずに、彼女の傘を取る
『え…』
『文句でもあるのか?』
『…ないですけど…』
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2人分には小さめの傘をさして
近い距離に並んで歩く
『美優』
『なんですか?』
『…お前が思うよりも…』
『え?』
『いや…』
『…わたしは…あの日 から、ずっと』
『大好きなんですけどね?』
『…知っている』
ニヤリと笑う
『でも、どっかいっちゃいますよ?』
『…高杉さんのこと思うと、心臓が持ちそうにないから』
『なんて…きっと離れられないんですけど…』
彼の目を見ずに言う
いつもは絶対に伝えない
ちいさな不満を投げかける
彼はまた
ニヤリと笑って傘を下ろす
『夏の雨に濡れて帰るのも一興だろう?』
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雨に濡れて家までの道を歩く
細く束になった髪が
白い肌にまとわりつく
それはまるで
俺に抱かれているときの
汗ばんだ美優のようで
雨に濡れた睫毛は
涙を流す時の美優のようで
肌にはりつく薄手の服が
彼女の柔らかな曲線をなぞる
耳に入る雨音
繋いだ手の体温は雨の所為で不確かに伝わる
マンションのエントランスに着き
エレベーターに乗り込む
ドアが閉まると同時に
びしょ濡れの身体で
びしょ濡れの彼女を引き寄せて
強引にキスをする
狭い空間の角に押し込めて
何も言わずに腕の中に閉じ込める
雨が滴り落ちる髪がぐしゃぐしゃになってしまうほど
美優を抱いて
至る所にキスをする
…扉が開く
気にもせずに
彼女の首元に顔を埋める
『…た、かすぎさん…ッ』
か細い腕で押し返そうとする仕草も
肩を強張らせて耐える表情も
全てが俺を捕らえて離さないのに
…そして静かに扉が閉まる
『美優』
『…あの時と同じだな』
『…覚えてたんですね…』
…忘れる訳がないだろう
手に入れたくて仕方なかったお前を
やっと手に入れた夜なのに
そして耳元で囁く
『俺から離れられない、じゃなくて…離れるな』
『俺はお前に心底惚れてるぞ?』
『狡い…』
『…一年も待たせないでくださいよ』
『…美優、そういえば』
『誕生日だったな』
眉を下げて
『それも、今日一日待ちました』
膨れっ面で言うお前が悪い
また強く抱きしめて離せない
長い睫毛を濡らすのは
彼女の前髪から滴る雨か
それとも…
雲の厚い
星ひとつ見えない夜空
エレベーターの表示板は動かない


