徒花零れる~
※花咲く戯作の二律背反・非公式完結編です
※BL要素を含みますので、お嫌いな方は
速やかに素通りをお願いいたします。
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長州に戻り
飛び回るように、多くのことをこなし
息つく間もないほどに動き回っても
一たび止まれば
どこもかしこも…冷え切るようだ
指先が凍えるように冷たく
無意識にその指を噛めば
そこにあるはずの熱さえも奪われる
名を呼ばれ
指示を仰がれ
…時折、嫌な顔をされながら
それでも必要とされていることは理解できる
自惚れでもなければ
自負心が強いわけでもない
ただ、そこには
なにかが欠落している
…信じられるものを見失えば
迷いが生じ
迷いが生じれば
即ち、死が待つのみ
松陰先生を失ってから
迷うこともなく
ただひたすらに走り続けてこられた
否
今もまだ、止まることなく走り続けられる
凍えそうに冷え切った指先に反し
逃げ場もなく
逃がす術も持たずに
燃え続ける、猛火
ただ…己の中に燻る熱を
消すことなく、宥めあえる
…あいつが居れば
熱に身を焦がすことなく
己を燃やし続けることができる
『受け入れろ、古高殿』
……俺を
……己を
『…百戦錬磨のお前が』
『こんな簡単なこともわからないのか』
瞳を見据えたままヤツの手元から杯を奪い
ぐいと一気に中身を煽る
そうして
ヤツの唇へ
自らの唇から
酒を流し込む
あの日、ヤツがそうしたように
冷え切っていたはずの指先で
顎をくいと上げさせる
整えられた顎髭の近くを
細く一筋の水跡が通り
さほど多くない量の酒が飲み干されたことを
上下する喉元で知る
その様を見た、その一瞬で
指先に体温が戻るような気がした