モデルの仕事は17歳の時からやっていたのだが
5年後には辞めてエスティシャンになるための学校に通い始めた。
21の時、仕事でフランスに出かけた時、ある有名なエステティックで
全身を美容してもらったことがきっかけだったのかもしれない。
そのエステで全身美容をしてもらう為だけにパリに出かける人もいて、
年に2-3回行く仲間もいた。
自分は背も高くないし、この道でずっとやっていく程の気持ちも
だんだん薄れていた頃だった。
そして偶然にもパリのその有名なエステが日本に開校することになり
第一期生として春から勉強することにしたのだ。
22歳で一番未来を感じ、希望に満ち溢れている頃、卓也は、
夜学に通いながら会社員として働いていた。

高校を首席で卒業して、在学中も試験勉強など殆どしなくても
常に一番の成績を取っていた。
電気店でバイトして高校生にしては高額な収入を得ていたし
そのお金で授業料を賄うことが出来ていたので
夜遊びをしていても両親は何も言わなかった。
また成績優秀だったお陰で担任がうまく取り計らってくれて
学校の試験中にもかかわらず車の免許取得の合宿にも
休んで取りに出かけた事もあった。
いま考えると随分のんびりとした時代の話に聞こえる。
「進学校では無かったからなぁ」
卓也は、学内では成績が優秀だったが、進学するための学校では無かった事を
強調するのが口癖のようだった。
久美子は、そんなこと全然気にしていないのに・・・・
卓也の性格って、とても複雑怪奇だわ。
久美子は、いつもそう思いながらもそれにどんどん魅了されていく自分を感じていた。
卓也は、高校生ながらもう心身ともに立派な大人の男になっていて
その辺の20代の青年よりも大人だった。
高校在学中から希望だったある職業に就きたかったのだが
結局無難なサラリーマンになった。
でも会社で働き始めてから一年もしないうちに
周りにそうそうたる学歴を持つ社員が多いことに気が付き
やはり大学で勉強をしようと思い、
夜学に通い始めたのだった。
4年間で夜学を無事卒業して何かが自分の中で変化していた。

一番身体の相性が良かったのは、結婚前に交際していた年上の女性上司だったけれど
その人と同じかそれよりも良いのが久美子だよと卓也は言う。
それは久美子にとって嬉しい言葉だったけれど、
久美子だけにそれを言っているのかどうかは
本人にしかわからないのも事実。
他の人にも君が一番良かったよ、と言っているかもしれないし、
またそうで無いかもしれないし・・・・
女は好きでも無い人と寝る事が出来るのだろうか。
その質問を男に置き換えてみたことがある。

卓也は、
「それは出来るだろうけど、もちろん。特に男の場合、風俗と言うものもあるし」
「そうよね。」
女にはそういうものは無いから、またあったとしても、
わざわざお金を出してまで欲望を満たそうとする人って
あまり居ないでしょう?
今でこそ、ホストクラブとか、
パトロンとかが割合聞くようになったけど。。。
まだまだ一部の人だけでしょうね。
深夜二時までベッドで交わり、激しい一夜を過ごした。
その夜は、蒸し暑かったからなのかエロティックな映画を観たからなのか
ムードが盛り上がってしまい、抱かれている時の感覚が今までの中で最高だった。
でも、ふと冷静になる自分がいて・・・・・
自分を見失うような感覚に堕ちて行くのがとても怖かった。
卓也と言う海が久美子と言う浜辺に漣を起こす時、
あまりの心地よさに「卓也....」 と名前を呼ぶ自分がいた。
「怖い。 怖い。」
「どうして?」
あまりにも幸せ過ぎてそれが壊れてしまうのでは無いか
これは夢かもしれないと言う思いに囚われてしまい怖かった。
だって、幸せの裏返しは不幸せでしょう?
久美子が、24歳で再婚して、10年後には、原因不明の病の為に闘病生活を
送る事になってしまうなんて誰も予想できなかっただろう。
でもしかし、実際問題、急に足が悪くなりひどい痛みで苦しむ毎日だった。
卓也と結婚して最初の4年間が一番幸せな時だったのかもしれない。
28の時に、ある大学病院で検査してもらいその後転々と色々な病院を訪れた。
整形外科、外科、内科、など全てドクターショッピングしても
症状は良くならなかった。
そして2年後に精神科の門を叩いた。
久美子が、2週間に一度のカウンセリングを受けるために
卓也は会社を休み病院に付き添う生活が始まった。
その後、5年一緒に通院したが、そのうち卓也の手を煩わすことが重荷になって来て
6年目からは、自分ひとりで杖を突きながら
タクシーで通院するようになった。
痛みの原因は、今の医学では、治らない難病だという事だった。
病名はあるのだが、親兄弟、友人に教えても
誰も知らない名前なのでもう何も言う気が起きなくなっていた。
そして、仲の良かった友達とも段々疎遠になって行き
それまでは、横浜に住まいを構えていたのだが、
病院に通うのに便利な東京都下に住まいを移すことにした。
新婚当初からずっと寝室は一緒にしていて、
セミダブルにふたり仲良く寝ているが
結婚生活18年のうち、最初の4年間だけ性生活があっただけだった。
もうかれこれ15年近く、夫婦の交わりをしていないのだから、
結婚前の様々な派手な女性関係があった卓也にとって、
今の状況は、最悪だと言える。
でもそれほど、セックスをしたいとは思わなくなっていたのは
もう20代のころに比べると性欲も衰えて来ていたからだと思う。
高校二年の時、スーパーの電気店でバイトをしていたが
その時に、よく電器の修理・点検の電話をかけてくる女性がいた。
その女性の住む団地には、何度かセールスに出かけていたのだが
訪問するとベビードール姿で玄関先に出てくるので
卓也は、ちょっと困った顔をしてしまう。
またそのベビードールは丈が短く、透けているので目のやり場に困るのだ。
またその困った顔を見るのを楽しんでいるような
奥さんの挑発に乗らないように苦労しながら、
部屋に入り点検するのだが、それも限界に近かった。
その数日後、学校が終わりバイトに行くともう店にその奥さんが来ていて
卓也を待ち伏せするようになった。
そして、いきなりトイレに連れ込まれてしまい
ズボンのファスナーを下ろし、卓也のあそこを舐め始めるのだった。
人妻の艶かしい舌使いに悩殺されそうになった。
ふと我に返るとワンピースの下には何も着けていない奥さんが
後ろ向きになってお尻を突き出していた。
欲求不満の奥さんの慰めの為に、卓也は一役買おうと思った。
やれやれ・・・・
しょうがないな。
あまり気乗りがしなかったが、卓也は一生懸命奉仕することにしたのだった。
卓也には、セックスフレンドが複数いたので、
何もその奥さんに奉仕する程のことも無かったのだが
旦那に構ってもらえない気の毒な奥さんの情にほだされてしまったのかもしれない。
トイレのタイルに手を付き恥も外聞も無く欲望に身を任せている人妻。
年のころ、30歳くらいだったと思う。
「中に出して。」
一瞬迷ったが、 ええい ままよ と勢いよく放出してしまった。
なんて下品なことをしているんだろうと思いながらも、やってしまった。
その後もその奥さんから追いかけられたが、
断る理由も無かったので、しばらく付き合ってあげる事にした。
いつも店に来る時は、下着を着けないで来ていて
卓也の顔を見つけると、嬉しそうに顔を綻ばせて誘う女だった。
当時の卓也は、女子高生何人かとも付き合っていて夕方セックスをして
夜はバイトでその奥さんのお相手をして、深夜は、葉山に住む「まり」の相手をしていた。
一日に三回も違う女とセックスする自分に何の疑問も持たなかった。
久美子にせがまれて、卓也は、この25年も前の話をするのだが
自分の夫が結婚してからセックスに縁が無くなったことを
どんな風に思っているのか聞いてみたことがある。
意地悪そうな顔をしながら・・・
「20代後半から30代後半まで全然浮気をしなかったけれど
セックスをしない生活に慣れてしまえば我慢できるものだよ。」
卓也はしらっとそう答えた。
でも、結局その我慢も37歳までで、その後は、久美子に黙って浮気をしていたから
頭が上がらなかったのだったが・・・。
若気の至りであちこちの女を口説いて来たけれど、
今となっては自分の本当に愛している女性と言うのは
肉体的な欲望を満たして精神的に安心できる一人の女性しかいないような気がしている。
またそのひとりの女性も、今は全く音信不通になっているので
好きな女性は、居ない方が良いんだと思うようにしているのだ。
久美子が、卓也に、時々聞いて見たいことがあるのだが
それはまだ言えないでいる。
永遠に言わないで終わるかもしれない。


7月は、潮風の香り。。。
裸足で浜辺を歩いてみました。
卓也と歩いた、あの道をもう一度辿りたくなったから。
久美子が17歳の時、卓也はたくさんの仲間といつも一緒だったので
ふたりだけで会うことは無かったけれど・・・・
亡くなった夫が卓也の無二の親友で、いつも聞かされていたから
とても身近に感じていたのよ。
遊びに行く時も、卓也は大勢引き連れて行く人だったので
例えが悪いけど、サル山のボスざるみたいな感じだったの。
先週は、いきなりペンギンの写メを送ってくるのでびっくりしたわ。
北海道に出張で動物園にも行ったからだって言うけど
しろくまや虎を一生懸命撮っている姿を想像したら
可笑しくなってしまいました。
可愛い人。。。。
愛しい人。。。。
そう思う瞬間。

卓也は、久美子を抱く時、とても切なそうな顔を見せるけど
セックスが強くて、激しいので、そのギャップがまたセクシーだと思う。
男のロマンと言うフレーズはもう随分前に流行ったけれど
彼を見ているとそれを感じます。
「久美子のこと好き?」
「好きだよ。」
「久美子のこと、いつ頃好きになったの?」
「そうだな。二回目にデートした時かな。」
でも、一度目のデートの時にすでに私たちは、ホテルに行き
一夜を共にしていたのでその時は、好きでも無かったのに肌と肌を合わせたのね。
そして、事が終わって、卓也がぽつんと言った言葉、今も覚えているわ。
がっくり肩を落として・・・・・
あああ。最後の一線を越えてしまった・・・・
それは、いけないことをしでかした犯罪人のように見えました。
久美子は、その時、罪の意識をなぜ感じるのか、わからなかったから
後ろめたい気持ちがあるなら、もう会うのは辞めましょうと言いました。
そんな感じのスタートだったけど、その時は、
もう最後だと思っていたので・・・・
これは、もう、、、運命の悪戯なのでしょうね。
Tへ捧ぐ。

私は、海の家でビーチボールしたり、波乗りをする仲間と
いつものように浜辺で待ち合わせていて卓也は、町の小さな電気店でバイトをしていて
最初はチラシ配りをしていた。
そのバイトを始めてから数ヶ月が過ぎた頃、電気店の社長に
団地を回る御用聞きの仕事も任されるようになって学校が終わるとその仕事をしていた。
その大きな団地には、小中学校の同級生の家もあったりして
卓也が突然玄関先に現れるものだから、びっくりしたって麗子から聞いたこともあるのよ。
でも天性の才能があるのか、卓也は、その御用聞きの仕事を難なくこなしてしまって
いつのまにか、月に何百万もの売り上げを立ててしまった。
半年もするとお給料が当時20年以上も前の話だけど○○万円にもなっていたので
そのお金でみんなとクラブ通いをしたり
海の家の仲間とパーティーをしたりして毎日がとても忙しく過ぎていた。
私は、卓也の一番の親友と恋人同士だったのでよく彼にあなたのことを聞いていたの。
小さい頃から一人で山に行き、一人旅も経験していて
13歳ですでに、お酒もタバコも吸っていて、でも勉強も良く出来て
みんなに一目置かれているやつだったって・・・・
卓也が、15歳の時、私のことは知らなかったみたいだけど
私はあなたを知っていたの。
卓也が16歳の時に付き合っていた彼女は、私の親友だったから。
まったく、なんて世間は狭いのでしょうね。
複数の女子高生と付き合っていて
毎日違う女子高生と町を歩いている姿をよく見かけたし・・・
違う高校の女子生徒からもラブレターをもらっていて
もてもてのあなただったから他校の生徒にも睨まれていて、
高校の授業が終わり彼女と一緒に下校していた時に
突然鉄パイプで殴られて血を流した事もあったわ。
その事も彼女から聞いていたの。。。
その時の眉間の傷を25年経っても教えてくれるけれど、
私には何も残っていないように思えたわ。
ふふふ。
そして葉山で知り合った年上の女があなたに惚れ込んでいて、
18歳の時には、「ラ・マン」だった。
その女性にセックスの手ほどきをされてあなたはどんどん大人の男になっていった。
今でも卓也と喫茶店でお茶する時に、恥ずかしそうに懺悔するでしょう?
数ヶ月前だったか、モーニングを一緒にした時に、
「高校の時は、ナンパし放題だったな・・・。」
ぽつりとそう言うので・・・・
私は不思議なものでも観るようにじっと見詰めてしまったわ。
なぜ今更25年も前の話を私にするのかなぁって・・・
くすくすっと小さく笑ってしまいました。
最初、そうあれは一年位前のことだけど、初体験はいつ? と言う話しになって
卓也は、数秒の沈黙の後、
「20だか21だったかな。」と言ったけど
それは大嘘で、実際は、13歳だったらしい。
でも11歳頃には、もう夢精も精通もあったそうなので、(なぜか私は知っているけど)
随分早熟だったみたい。
早すぎるよね。全てに置いていろいろな体験が早くて。
晩生の私には理解できないことも多かった。
キスが上手なので、私の友人は卓也に初体験をしてって頼んでいて
その子がまた別の女の子を紹介していて、高校時代いろんな子とセックスをしていた。
あのころ海の家の仲間たちは、いつも20人位でつるんでいて、ワイワイやっていて
太陽は今よりもぎらぎらしていたけれど、暑さはいまよりもちょっと違っていた。
いまは40度近くなる夏だから・・・・
あの当時の33度位の夏の暑さはまだまだ凌げるものだったの。
それに海の潮風があり、波乗りがあって、水といつも戯れていたから・・・

卓也が私になぜ月下美人の写真を送って来たのか
今も、時々考えているのです。。
そして早すぎる初体験が卓也を辱めることだったなんて
ちっとも気が付かなかった事も・・・

単身赴任の夫。
素敵な恋していますか。
あの人が私にこう言いました。
いつもそうなの。
突然やって来て、久美子を困らせるような悪戯をしてくる
戯れていたいから・・・
ずっとキスしていたいから
抱き合っていたいから
自然の中でのんびりとしていたいから。
川のせせらぎを聞きながら魚を釣り、
何もかも忘れて時の流れに身を任すこと。
新鮮な空気を胸いっぱい吸って、美味しいお酒を飲めたら
それで良いって・・・
食べ物でも好き嫌い無くて人でも好き嫌いのないあなたが、
久美子を好きだと言うのは嬉しいような、でも、
その他大勢のような気もします。
あなただけのもので居たいのに、特別な人で居たいのに
でもそれは無理なんだなって随分前にわかっていたので諦めています。
そういう関係なので、程ほどに仲が良くて
程ほどに離れていて単身赴任の夫を持つ妻は、こういう感じなのですね。

月下美人の画像をメールして下さった人、とても父に似ているのです。
亡き父は、花がとても好きで名前にも詳しかったのですが、
そのメール友達も、とても花が好きで、時々花を贈ってくれるんです。
一年に何度か会うのですが、一番驚いた事・・・
それは、父の生まれ変わりかと思う程似ていることです。
そして、クリスマスのころでしたが、お墓参りにも一緒に来てくれました。
クリスマスイルミネーションが綺麗なころでしたが
後で考えてみるとクリスマスはもともと家族と共に過ごす習慣があるのですね。

春にお花見に行きましょうとお誘いがありました。
私は、ずっと以前にある神社からお札を頂戴しておりましたが
まだそれを返しておりませんでした。
気を病んでいるときは、そういうことも気になってしまうみたいで
寝室の壁にあるそのお札が頭から離れないでいました。
そしてそのお札を早く返したいと思っていたところに
その場所へのお誘いがありましたのでびっくりしたのです。
ですから、何とかお札を返したい為に出かけてきました。
そこでは桜祭りを開催していてお花見の名所だったことを初めて知りました。
あちらこちらに桜並木がありメインストリートでは、5キロもの桜のアーチがありました。
それは、一年のうちに一週間かそこらで散ってしまう潔い桜の花が
そこでは充分堪能できるのですから・・・・
もちろん、一番の目的であるお札をお返しすることは
先に済ませていましたので心が軽くなったのは言うまでもありません。