萬狂言 「才宝」を拝見。

 

「才宝」とは三人の孫を持つ長寿の祖父の名だそう。三人の孫が祖父に烏帽子を着せてもらう(名前をつけてもらう)ために祖父の元を訪れる。

おそらく、祖父にあやかりめでたい人生を歩みたいとのことだろう。

祖父は、烏帽子を着せてもらうを聞き間違えたり、幼子に与えるような贈り物をしたりと、たいそうなボケぶりを発揮する。現代だったら痴呆症の爺さんなんかに会いにくる孫たちなどいないだろう。

祖父のトンチンカンな対応も穏やかな笑いの中に昇華されて、やがて皆で歌い舞うという歓喜の宴がひらかれる。そして最後には祖父は孫の手ぐるまに乗っていき宴が閉じられる。

 誠にしっとりとした情愛を感じさせる演目であった。心の「才宝」として残り続けることだろう。