先日は国立能楽堂で「蜘蛛盗人」を拝見。

初めてみる演目である。

 

場面は連歌の初心講。

連歌とは和歌によるジャムセッションのようなものか。

つまり地位も名誉もお金もあるセレブが、”和歌のジャムセッション初心者の会”を開催しているということらしい。

参加者はセレブ限定なので、当然のことながら、主人公の貧しい男はここに入ることはできない。そこで、男は何とか盗み聞きしようと屋敷に忍びこむ。

用意周到にもノコギリを準備し、屋敷の塀を壊して侵入する。

器物損壊、不法侵入である。しかも確信犯だ

 

先日は国立能楽堂で「蜘蛛盗人」を拝見。

初めてみる演目である。

 

場面は連歌の初心講。

連歌とは和歌によるジャムセッションのようなものか。

つまり地位も名誉もお金もあるセレブが、”和歌のジャムセッション初心者の会”を開催しているということらしい。

参加者はセレブ限定なので、当然のことながら、主人公の貧しい男はここに入ることはできない。そこで、男は何とか盗み聞きしようと屋敷に忍びこむ。

用意周到にもノコギリを準備し、屋敷の塀を壊して侵入する。

器物損壊、不法侵入である。しかも確信犯だ。

もちろん、そんな悪事はまっとうされることはなく、物音を聞きつけた屋敷の人々は侵入者を捜索し追い詰める。

男は逃げ場を失い、ついに蜘蛛の巣に引っかかって身動きができなくなってしまう。

(人間が引っかかる蜘蛛の巣って?!と思われるかもしれないが、そこが狂言なのである。)

現在なら器物損壊罪、不法侵入罪で3年以下の懲役または10万以下の罰金といったところだが、犯人の人権などは補償されていない当時のことだから、その場で打首でもおかしくない。しかし、男は大の連歌好き。それが身を助け、主催者の読んだ句に見事な句で答え褒美までもらってしまうという顛末。

最後の場面では貧しい男もセレブたちも共に酒を飲み謡い舞うのである。男が舞う「雪山」などとても美しく心和むシーンだ。(貧しい男がいつどこで舞いや歌を覚えたの?ということは問わないでほしい・・・)

 

「力をもいれずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の中をもやはらげ、猛き武士の心をもなぐさむるは、歌なり・・・」と古今和歌集にあるように、身分や性別を超えて人と心と心を繋ぐものが歌なのである。

 

春ごとにきみを祝いて若菜つむ 我が衣でに降る雪を

はらわじはらわでそのままに 受くるそでの雪・・・

 

男の舞と歌の余韻はいつまでも人の心の奥に響き続けるだろう・・・