能楽の舞台も最近はハイテク機器が導入され、座席のところに字幕が出るようになった。
また、演目が始まる前に解説を行うというようなこともなされている…。

確かに解説を聞くと「なあるほど」と納得するし、はるかに演目も「理解」しやすい…
解説もすばらしい…

ん?「理解…?」と…私は思った…
何故、理解しなきゃならんのだ?

そもそも人間に「理解」できるものだけで、この世界はなりたっているわけではない…
それに…「鉄輪」や「道成寺」が「理解」できなかったからといって会社を首になるわけでもない…
そもそも…わざわざ能舞台を見に来るのは…

「理解できない」「非日常」を味わうことのためにやってきているのではなかったか…

「理解できない」世界を味わい…なにかわからない恐ろしい存在を抱えてみる…
それが能舞台の味わいの醍醐味ではないのか…

「理解」とか理論とかいう回路からではなく…
全身全霊をかたむけて…静けさに耳を傾け…見えないものを見る…
わからないもの…不思議なもの…恐ろしいもの…をそのまま感じるてみる…
それは新しい体験だ…「理解すること」や「解説すること」の延長上には決して存在しえない…。

言葉では言い尽くせない世界を言葉の世界に切り縮めるのはやめて…
未知の世界へと踏み出してみるのが能楽鑑賞の楽しみだと思う…。