心にしみる「イイ」話・続き | やっぱり馬が好き~ふろむオーストラリア~

心にしみる「イイ」話・続き

心にしみる「イイ」話 の続きです












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私がはめているのは、確かにマリッジリングです。
でも、右手の薬指にはめているので、誰もがそれがマリッジリングだと気付くわけではないのですが…Aさんにはわかってたようです。

私には、昔、長く付き合った人がいました。
バイクの好きな大きな人でした。
私のことを、「おまえならうっかり落としても簡単に壊れそうにない」
と言って、ほめてるのかけなしてるのかわからない感じで私を選んだのだと言いました。
結婚を、しようと思ってました。その人と。
婚約指輪は似合わないからいらないと伝え、
変わりにふんぱつして、老舗のブランドのマリッジリングを買いました。
式場も日取りも決まっていました。
ドレスを着るのが嫌で、二人でタキシードがいいんじゃないかって笑ったりしてました。

でも、それが最後でした。
大好きなバイクに乗っていて、大好きなバイクと一緒に、
壊れてしまいました。
彼は、二度と帰ってきませんでした。
残ったのはマリッジリングだけです。
左手にはめるわけにもいかず、私はそれを右手にはめて毎日を過ごしています。


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殴り合うような喧嘩だってしたはずなのに、思い出ってずるいですよね。
良いことばかり思いだして、それがさらに脚色されてるんですよ。
もう誰も、何も、思い出になってしまった人には勝てません。
別の人と恋をして最初からやり直すなんて、とても気力が持てません。
彼が死んでから10年以上たつのに、私の気持ちは過去に置き去りにされたままなんです。

ちなみに、同期のMは、彼の親友でした。
私たちはよく3人でつるんでました。
私とMは、彼に置き去りにされて、今も途方に暮れているんです。

もう、悲しい気持ちはかさぶたのようになってしまっていて、
人に結婚のことを聞かれても平気なんですが、
しつこく尋問されるとつい、答えるのが嫌になってきつい態度に出てしまいます。

今日はAさんとなんとなく気まずい感じでした。
かといって、Aさんの機嫌を取るような言葉を言えない自分がいます。
せめて私も優しく笑いかけたりできればいいのですが…。
愛想笑いはどう見ても向いていません。

Aさんは何も悪いことをしていないのだけれど…。

大人になりきれない自分が情けなく思います。


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さて、今日もなんとな~くぎくしゃくしてました。
いつものようにお昼を一緒にしているのですが、
会話はぐっと減ったと思います。
できるだけ自然に過ごしたいと思っているのですが、
どうも今ひとつうまく立ち回れません。

私はAさんのことを怒ってはいないし、傷ついてもいないのですが、
思わずむっとした表情をしてしまったことに、
思わず大きな声を出しそうになってしまったことに、
自分が驚いていて、自己嫌悪中です。

Aさんは強く触ったら壊れてしまいそうな人です。
仲良くしようと、できるだけ優しく接しようと気をつけていたんですが。

皆さんのおっしゃるように、
流れにまかせて少し時間が経てば、
この間までのように自然にほのぼのできるかなあ…


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今日は部署の有志が飲み会を開いたのですが、私は気乗りせずに参加しませんでした。
みどりも習い事のフラメンコの教室があるとのことで今日は定時退社。
私は一人で少し残業をしたのですが、静かな部屋で一人でいるのも気が滅入り、仕事も進まないので諦めて帰ろうと部屋を出ました。
会社の玄関に向かう途中、背中に衝撃を受けてバランスを崩しました。
かろうじて転ばなかったものの、背中に受けた衝撃はそのまま留まっています。
まさか…と思い上半身を少しねじって確認すると、
衝撃の主はAさんでした。

心のどこかで、やっぱり…と思いました。

私「どうしたの?いつも定時で帰るのに…。家はいいの?息子は?」

Aさん(ただ首を横にふるばかり)

私「放して?誰か見たら変に思うでしょ?何してるんだって思われちゃうよ?(笑)」

Aさんは私の腰から離れません…。


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Aさんが、とても小さな声で「ごめんなさい」と言いました。
それからしゃくりあげて泣きはじめました。

私はさすがに人が来るのではと焦り、
とりあえず…と、Aさんを腰にぶら下げたまま、
やどかりのような恰好で、脇にある簡易応接に入りました。

私「聞いたんだ?M?」

Aさんがうなずくのを背中に感じました。

私「ね、放してくれない?」

首を横に振り、放してくれそうにありません。

仕方が無いので、私のお腹にあるAさんの小さな手に、
私の手を重ねて話をしました。
小さくても、その手はとても温かい手でした。

私「怒ってないよ。傷ついてもいない」

Aさん「…」

私「心配しなくていいよ。態度が変だったのは、少し戸惑っただけ…」

しがみついていた手の力が緩んで、Aさんが私を見上げました。

Aさん「でも悲しい気持ちになったでしょう?」

私「いや。もう悲しいくないよ。昔のこと過ぎて」

すると、Aさんは私を突き飛ばし、
私は簡易応接の堅いソファーに座りこむ形になりました。


ふいに思わぬ力をぶつけられて驚いている私は、今度はAさんを見上げる体勢になっていることに気付きました。
Aさんの目にはまだ涙が残っていました。

Aさん「嘘!まだ指輪はずせないのに、悲しくないわけないもん!」

そういって、今度はわーわー泣きはじめました。
本当に弱り果てました…。

向き合う形でAさんの腰を今度は私が支え、
泣かないで、本当に平気だからと何度も言いました。
するとAさんは、泣くことは悪い事じゃない、泣くから悲しい事を乗り越えるんだというような事を一生懸命言葉にしてました。

そして…

ふわりと私の頭を胸に抱きしめて、
クローバーさんが泣かないから、代わりに泣いてるんだと言いました。

Aさんのやわらかな胸の感触を顔に受けながら、
しゅういちは毎日この感触を味わってるのかーとか、
そして、おそらくはMが全部喋ったであろうことを察知し、
あのペラ太郎許さないぞと心に誓ったりしていました。
というのも、一体どういう反応をすればいいのか、
まったくわからなくて途方に暮れてしまったのです…。

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たくさん泣いていたAさんは少し落ち着いてきて、
まともに話せるようになってきて…

Aさん「クローバーさん、もう泣いていいんだよ。
    彼はもうちゃんと天国に行ったから、泣いても平気なんだよ。
    ちゃんと泣いたら、きっと心が軽くなるから、
    だからもう、いっぱい泣いていいんだよ。
    悲しいって、いっていいんだよ」

お母さんが子供に諭すような、やさしい声が耳に届きました。

私は、え?ほんとに平気なんだよ? と、言いながら、
はじめて…
ほんとうにはじめて…
この事で、涙が自分の頬を濡らすのを感じました。

あまりに悲しすぎて、わけもなく腹も立って、
ずっとずっと泣けないままきていたのに、
Aさんのやさしいぬくもりの中で、
まるで何かを許されたかのように、
私は声も出さずに黙って泣きました。

Aさんのお腹から、子犬の鳴き声が聞こえるまでの、数分の間…
だったと思います。でも、私には長い長い、とても長い時間に思えました。

子犬の声に私たちは目を合わせ、微笑み合いました。


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Aさんは真っ赤な顔をしてました。
私はたぶん、真っ赤な目をしていたと思います。

私「お腹すいたね」

Aさん「うん」

私「ラーメン食べたいな」

Aさん「私も」

家は大丈夫なのかと聞くと、パパがもう帰ってるから平気だと言い、
二人でラーメンを食べて帰ってきました。

ラーメン屋までの道すがら、
気がつけばAさんが私の手をとって、
私たちは手を繋いでいました。

普段なら、何がなんでもその手をふりほどくところなのですが、
今日はそのまま手を繋がれている私がいました。

すれ違う人は、変に思ったでしょうね。
いい年をした女がふたり。手を繋いで歩いているのですから…。

Aさんの前で、みるみる伸びていくラーメンを見ながら、
週末にAさんのお宅へ昼食の招待を受け、
素直に約束をしている自分がいました。


胸に何かあたたかいものを、今、すごく感じています。

さっき脱いだコートには、Aさんの化粧と涙が交じった染みができてましたけど(笑)
クリーニングせずにこのままとっておきたい気持ちです。


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今日Aさんが退社する時、まさに「ちぎれるほど」手を振って帰りました。
自然に笑顔になり、心から彼女を「めちゃくちゃ可愛い」と思えました。

なんだか憑き物が落ちたような晴れやかな気分です。

今日はペラ太郎(同期のM)に確認しましたら、ただニヤニヤ笑っていました。
私は報復は与えずにありがとうを伝え、
彼は片手をあげて「どういたしまして」と答えました。

思えば、私は確かに良い仲間に恵まれています。

みどりのフラメンコは、以前一度見に行ったことがあります。
相変わらずの無表情でしたが、それに反して踊りはとても情熱的です。皆さんにお見せしたい(笑)

今は明日を心待ちにしています。
Aさんに似会いそうな苺のタルトを買っていこうと思っています。
最初にAさんを誘った店がテイクアウトを扱っているのです。


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Aさん宅を訪れると、素敵な洋風の一軒家でした。
小さな庭があり、小さな草花がたくさん咲いていました。
たぶん、幸せというものを絵に描いたら、こんな絵になるのじゃないか…
そんなことを思いました。

出迎えてくれたAさんと、ご主人がお料理を作ってくださっている間、リビングで話しました。
(手伝いを申し出たのですが断られました。私も料理の腕はたいしたことないので、そのままAさんと話すことにしました)

私はAさんから、マリッジリングのもう片方を持ってきてくれと言われており、
何故?と思いながら何年ぶりかに引き出しから出し、持ってきました。
見せてくれと言われそれを出すと、Aさんがチェーンを箱から出してきました。そして私の右手から私のリングを外し、そのチェーンに彼がはめるはずだったリングと私のリングを通しました。
それから、それを私の首にかけ、

Aさん「こうすれば離れ離れじゃないと思う。これじゃだめ?」

と言いました。


胸に下がったふたつのリングを指でそっとなで、
少しためらいを感じましたが、
確かにこの方がいいのかもしれないな…と思いました。

一度もはめられなかった彼のリングはピカピカで、
ずっと右手にはめていた私のリングは傷だらけで、
若いまま時を止めてしまった彼と、
それからも年をとってしまった私を象徴しているようなリングが、
今、私の胸で重なっています。

ご主人がテーブルメイキングを始められたのでそれを二人で手伝いながら、
息子さんは出かけているということだったけれど、席が4人分であることに気付き、おや?と思っていると、

Aさん「今日はもう一人お客様が見えることになってるの」

私「え?! 私の知ってる人?」

Aさん「うん。でも遅いな…。迷ってるのかな…。表で待ってようかな」

私「え? 誰? みどり?」

Aさんはみどりと聞いてもじもじしています。
はは~ん、会社のお昼をここで再現するのかな?と思っていると、
Aさんは外見てくる!と、玄関へ行ってしまいました。

ご主人「みどりさんは誘い辛かったみたいで」(苦笑)

(じゃあ誰?)


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私も知っている人なら、私も一緒に外で待ってみます。

ご主人にそう告げ、私も玄関へ出てみると、
その扉をあけたところには、
Aさんと、照れくさそうに笑うMがいました。

私「え!?なんであんたが来るの!?」

Mは、自分は仲直りの立役者だから呼ばれたのだと偉そうに言い、
Aさんと目を合わせ、それに俺たちは「エクボクラブ」だからと、
意味のわからないことを言いました。

なんだそれ…。
来るなら来るって昨日のうちに言えばよかったのに。
Aさんも…。

食事は和やかに進みました。
Aさんのご主人は穏やかで話題が豊富でインテリジェンスの高い方でした。
見た目が、
ドラマの古畑任三郎に出ていた今泉刑事に似てるなあ…って思いながら、
そればかり考えてご主人の顔ばかり見ていました(苦笑)
食後にテーブルマジックを披露してくださったり、色々と気をつかっていただいたようです。
とても楽しい時間を過ごすことができました。

あっと言う間に時間が過ぎ、Aさん宅を辞去する際、
AさんとMが何か目配せでしているのが気になりました。

帰り道で問い詰めよう。


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駅までの道を並んで歩きながら、
誘われたからってホイホイ来てずうずうしい奴だと言うと、

M「彼女(Aさん)に教わったんだ。人間素直が肝心だって」



M「だから伝えようと思った。おまえに」

私の足は進むことをやめていました。
私より少し進んだところでMも立ち止まり、
振り返る形で私を見ました。
呼吸するのも忘れてMを見つめると、
Mの顔にいつもの笑顔はありませんでした。

M「いつか、自分の庭でおまえと子犬を飼いたい。
   何年でも待てる。踏ん切りがついたら、全部持って俺のところに来い」

時が止まったかのようでした。

でも私は忘れられないこと。特にMとだったらなおさら忘れることができないこと、
今でも、私が死んだらあのウェディングドレスを着て棺に入る決心は変わっていないことを告げれば、

M「忘れなくていい。忘れてほしくない。
    あいつのことは、一生忘れないでやってほしい」

混乱して動揺する私に、もう10年待てたからあと10年くらい待てるからと。


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不思議な巡りあわせでAさんと出会い、
彼女は私に、新しい世界へと続く扉を開けてくれました。
この世界から、新しい世界へ歩み出せるのか、
今はまだ、自分でもよくわかりません。

けれど、いつか、明るいご報告ができる日が訪れるのではないかと…
そんな淡い希望は胸に宿っています。

読んで頂いてありがとうございました。



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ご訪問ありがとうございました o(^-^)o





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