LaboFB・永山政広の防災ブログ

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減災研究室ラボラトリー・フィードバック(LaboFB)を主宰する永山政広のブログです。防災に役立つ情報を発信していきます!

2024年8月8日16時42分、日向灘で発生した地震(深さ30㎞、マグニチュード7.1、最大震度6弱)に伴い、気象庁から「南海トラフ地震に関連する情報」がいくつか発表されました。

 

1.南海トラフ地震に関連する情報とは


「南海トラフ地震臨時情報」と「南海トラフ地震関連解説情報」の2種類があり、次の条件に該当する場合に発表されることになっています。

 

 

また、それぞれの情報には、その内容を示すようなキーワードを付記することになっています。

 

※モーメントマグニチュードとは、断層のずれの規模をもとにして計算したマグニチュードです。巨大地震に対してもその規模を正しく表せる特徴を持っています。ただし、このマグニチュードを求めるには若干時間を要するため、気象庁が地震発生直後に発表する津波警報等や地震速報には、地震波の最大振幅から求められる気象庁マグニチュードを用いています。

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2.今回の情報発表までの流れ

今回は次のようなプロセスで情報発表が行われています。

➀日向灘で地震発生(マグニチュード7.1)
➁発生した地震が監視領域内であること、マグニチュード6.8以上であることから、「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表するとともに、「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催し、観測データの評価等を行う。
➂その結果、監視領域内において、モーメントマグニチュード7.0以上の地震が発生したと評価されたことから、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表。

以上のとおり、あらかじめ定められた手順に沿って、客観的なデータ評価が行われ、整然と発表されたものであり、特定の者の主観に左右されたものではありません。
発表内容の詳細は下記リンクで閲覧できます。

 

https://www.jma.go.jp/jma/press/2408/08e/NT_202408081945sv.pdf

 

重要ポイントとしては、

過去の事例から、モーメントマグニチュード7.0以上の地震が発生した後は、平常時と比べて新たな大規模地震が発生する確率が高まっている。

  • その確率は、先に発生した地震の直後ほど高く、時間経過とともに低くなっていくが決してゼロにはならない。
  • したがって、長期間の監視が必要ではあるものの、社会活動の停滞等も考慮し、目安として、1週間程度は警戒する必要がある。
  • 新たな大規模地震が発生する場所の予測は困難であるので、南海トラフ地震の想定震源域の全域を警戒する必要がある。


3.この情報をどう受け止めるか

気象庁の記者会見でも、冷静に受け止めるようにとコメントされていますが、その通りだと思います。
この情報発表は、これまでの地震研究から少しずつ分かってきたことを有効活用しようとする試みであり、巨大地震に不意打ちを食らうよりも、出来るだけ事前の体制を整えて地震を迎え撃とうという考えに基づいています。
もちろん、地震のメカニズムが十分に解明されているわけではなく、空振りも十分にあり得ます。
ただ、少なくとも大地震の発生確率が高まっていることは、確かであり、地震への備えとしてやるべきことを一層充実させるべきとの大自然からのメッセージとして受け止めるべきではないでしょうか。

地震の発生確率に対する考え方は、個人ごとに差があるのでしょう。それは降水確率の受け止め方に似ているかもしれませんね。
少しくらい雨に濡れても構わないと思う人は、傘を用意することもないでしょうが、どうしても濡れたくない人は、低い降水確率でも大きな傘を用意したり、場合によっては外出を控えるかもしれません。

これからお盆休みを迎えようとしている時期ですので、様々な行楽計画があるのではないでしょうか。津波が危惧される地域では、マリンレジャー等に影響が出る可能性もあります。ただ、一律に控えるということではなく、個々が主体的に判断すべきだと思います。避難に自信が持てない人は、海岸に近づくことをしばらく控えることも有効でしょうし、避難場所や経路をしっかり確認したうえで、マリンレジャーを楽しむことも悪くはないでしょう。
重要なことは、普段から自分自身の守り方をしっかりと理解しておくことです。今回の情報発表は、そのことを再確認するよう促しているのだと、私は受け止めています。


4.身を守るために

南海トラフ地震と言えども、備えの基本は、他の地震と大きく変わることはありません。
重要な点は、地震被害が波状的に何度も襲ってくることでしょう。次の図をご覧ください。

飲料水や食料などの対策はもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。何より生活空間の安全を保てないと、せっかく備蓄したものが役立つ前に命を落としてしまうからです。

居住する(あるいは勤務する)建物の構造、立地条件等により、被害状況も変わってきます。地震によりどのようなことが起こるのか、想像力を働かせ、それに有効な対策を個々に考えていく必要があるのです。
例えば津波の襲来が予想される地域では、安全な避難場所を知っておくことは不可欠です。ただ、それだけでは十分とはいえません。実際に模擬的な避難行動を体験し、そこにたどり着くまでの経路や所要時間を確認しておくべきではないでしょうか。

また、緊急地震速報が出たときの対処方法も再確認しておきましょう。
空振りがあったり、揺れが来るまでに間に合わないこともあり、不評を買うことも多い緊急地震速報ですが、2011年の東日本大震災では、速報から大きな揺れが襲ってくるまでの時間が10秒以上あった地域もあります。海溝型の地震だったので、震源域が都市部よりも離れていたからです。
僅か10秒でも行動次第では十分身を守ることができるといえるのではないでしょうか。

あらゆる手段を講じて身を守る術を身に着けておくことが重要でしょう。
南海トラフ地震臨時情報が出たからと言ってパニックにならないようにすることはもちろんですが、諦めたり、その逆に甘くみたりすることがないようにしなければなりません。
大自然の驚異を正しく恐れることが求められているのだと思います。