思想と思考ほど似て非なるものはない。思想は思考を妨げるという意味では、両者は対極にあるとさえ言えるだろう。
古今東西、人々は様々な思想に突き動かされて来た。それは宗教や民族主義、国家イデオロギーなどだ。そして往々にして言えるのは、それらの思想に深く傾倒している人ほど自らの思考を放棄しているということである。確かに思考という行為は非常に苦しいものであり、その責務を他者に委ねることが出来れば生きるのは楽であろう。しかし思考の伴わない思想の行使は、例えるならば目を瞑って車を運転するようなものであり、結局のところ壮絶な悲劇しか生み出さない愚行だと、俺などは思うのだ。