ドラえもんファン歴30年、俺は心のどこかで諦めていた。「もう映画ドラえもんに、往年のような名作は生まれないだろう」。だがしかし「まさかここへ来てついに出たよ、映画ドラえもん史上最高傑作」。それが2018年公開『のび太の宝島』である。
同作は英作家ロバート・L・スティーブンソンの『宝島』を題材にした冒険活劇だ。太平洋に突如として出現した宝島。それを目指すドラえもんとのび太たち。しかし突然現れた謎の海賊団とメカニックの少年フロック。そして海賊団団長シルバーが進める恐るべき計画とは。
『のび太の宝島』、その見所は大きく2つ。(1)海賊団団長シルバーの苦悩と葛藤。過去のドラえもんの映画作品を見渡しても、これほど感情移入してしまう悪役は他に類を見ない。彼の正義感や使命感を、果たして一概に責められようか。(2)失われた家族の絆とその再生の物語。はっきし言ってこれはずるい。間違いなく子供ではなくその親を泣かせに来ている。妻子のいない俺ですら、滂沱の涙が止まらなかった。
本当の意味で子供の未来を願うとは、一体どういうことなのか。まさに親子で一緒に観て、そして一緒に考えてもらいたい至極の秀逸作。『のび太の宝島』、今すぐDVDを購入されたし。