拒食症だ。多分これは拒食症だ。恐らく専門医に見せたらそう言われるだろう。この一週間、俺はまともに食事をしていない。
そもそも俺の食事の摂り方は特殊だ。日中はほとんど何も口にせず、夜家で一日分の食事、およそ1800kcalほどを摂取するのだ。10年20年、かなり長いことこのスタンスを続けてきてしまった。
事の発端は俺が奥歯を痛めたことだ。当然まともに食べ物が噛めない。仕方なく滅多にいかない歯医者へ。1ヶ月ほどの治療で奥歯はほぼ完治した。
しかしこれには意外な副産物が。俺の身長は177cmなのだが、最近増加気味でMAX75kgほどあった体重が、奥歯を痛め食欲が減退していたことでなんと72kgまで落ちていたのだ。これはラッキー、神様からの小粋なプレゼント。
しかし晴れて普通に食事をすると、1kg2kg体重は簡単に戻ってしまうのだ。いやいや、それは困る。なんとしても今の体重を維持したい。以前触れた通り、俺はストレスが溜まると暴食をしてそれを全て嘔吐してしまうという悪癖があるのだが、普段の通常量の食事も嘔吐するように。
すると体重は尚落ちた。1週間でさらに3kg落ちて69kg、ついに大学時代の体重だ。まさか体重計の十の位に6の数字を再び見る日が訪れるとは。俺はすっかり引っ込んでうっすら腹筋の浮き出た腹を何度も鏡に映して惚れ惚れとしたものだ。
しかしこの頃から、俺は自身の異変に気が付き始める。さすがにもう食べてもいいだろうと、普通に食事をしても、条件反射で吐いてしまう。胃の中に食べ物がある、その状態が不快で不快で耐えられなくなっていたのだ。気が付くと体重は66kgまで落ちていた。
後編へ続く。