皆さんは学生時代の体育、自分の50m走のタイムを覚えているだろうか。ちなみに俺は6秒8だ。そして今でも俺は50mを7秒フラットくらいで走れると信じている。そう、それは間違いなく幻想だ。しかし思うに、幻想は幻想のまま胸にとどめて置けばよい。それを掘り起こしてぶち壊したところで、例えば今更わざわざ50m走を測って10秒台のタイムに愕然としたところで、誰も何も得をしないのだから。
さて、性懲りもなく俺は暇な時間を見つけてはYouTubeに挙げられた大学の数学入試問題に挑んでいる。だが、これが相変わらず全く解けない。例えば同じようにYouTubeに寄せられる頭の体操やIQテストの類と違い、大学入試問題に挑戦するという行為は極めて自虐的でマゾヒスティックだ。なぜならそれは、過去に一度通った道だからである。挑めども解けず、挑めども解けず、暇つぶしと言えどだんだん泣きたくなってくる。それが例えば東大や京大といった、俺にとって未知の領域の入試問題ならばまだ納得も出来る。しかしかつて高得点を取ったはずのセンター試験の数学でさえ、もはやまるで歯が立たないのだ。時の流れは残酷だ。10余年の月日はこんなにも無慈悲に、俺の脳細胞を朽ち果てさせてしまったのか。
けれど苦悩の甲斐あってか、ようやく東大の関数問題や京大の高次方程式問題、一橋大の確率問題や慶応大のグラフ問題など、ぼちぼち完答できるようになってきた。Nice fight 俺。Good job 俺。だがそろそろこの趣味にも疲れてきた。脳が筋肉痛になりそうだ。ここらで淡い幻想を胸に秘め、数学を永久に封印するのもいいかも知れない。ありがとう数学。さようなら数学。そしてさようなら、報われることのなかった俺の苦い青春。