果たして彼らに、本当の作品愛はあるのだろうか。
2005年、国民的人気アニメ『ドラえもん』キャスト陣一斉交代。当時日本中のファンが物議を発し、特に現ドラえもん役の声優・水田わさび氏の下には心無いバッシングが数多く寄せられたという。
ちなみに俺は1981年生まれ、声優・大山のぶ代氏のドラえもんを視聴して育った世代である。もちろん心の奥底には大山のぶ代のドラえもんが根深く響いている。今でも大山氏の愛らしいドラ声が懐かしくないと言えば嘘になろう。
しかし俺は水田わさびのドラえもんをいち早く支持し、それをささやかながらもブログで訴え続けてきた。確かに大山のぶ代のドラえもんは偉大であった。けれど革新を恐れてこれを拒めば、『ドラえもん』は過去の遺物として日本のアニメ史の彼方に埋没してしまうではないか。
そしてそれから10余年。今尚ネット上で水田わさびのドラえもんを叩く声が後を絶たず、同じドラえもんファンとして嘆かわしい限りだ。彼らに言わせるならば、「水田わさびはドラえもんを演じるようになり、完全に天狗になっている」とのことだ。そこでここでは、これらの声に反論していきたい。
(1)まず水田わさびは近年、服装が派手になっているという。しかし水田氏はドラえもん役を得てから収入が急増、衣類にかけられる金もまた増えたのだから以前より高級な服を着るようになるのは至極当然である。年盛りの女性が美に努めることの何が悪いのか。
(2)また水田わさびは自身のドラえもんが定着していくに連れ、ますます舞い上がっているという。だが水田氏は96年声優デビュー以後、鳴かず飛ばずの下済み時代をずっと送ってきた。それが突然日本で一番有名なアニメキャラクターに抜擢され、それを10年以上も苦悶しながら演じ果たしてきたのだ。これで微塵も誇らずというのなら、それはもはや木石に同じではないか。
(3)さらに水田わさびは先代の大山のぶ代に対し、全く敬意を払っていないという。しかし水田わさびと現のび太役の大原めぐみ氏は以前、「ドラえもん映画祭2015」のトークショーに出演。その際にサプライズゲストとして登場した先代のび太役の小原乃梨子氏、先代静香役の野村道子氏からエールを受け、また闘病中の大山のぶ代からの手紙を読み聞かされ、水田氏と大原氏は言葉もなくその場で大号泣したといわれる。このエピソードを聞いて尚、同じことが言えるだろうか。
思うに、ネット上から批判の声が一掃されるまでにはおおよそ20年を要する。幼い頃から水田わさびのドラえもんに触れ親しんできた子供たちが、やがて大人になりネットの意見者となるまでにそれくらいの年月がかかるからである。
心無いバッシングが絶えるその日まで、そしてそれ以降も、水田わさびら現キャスト陣には堂々と胸を張って声優業に邁進し、次世代さらに次世代の子供たちにもその声で『ドラえもん』を届けてほしい。
俺はただ、ファンとしてどこまでも応援するのみ。