多元宇宙(パラレルワールド)をご存じだろうか。
多元宇宙とは時間的に並行して存在する無数の宇宙のことである。それぞれの宇宙には別の世界があり別のあなたが住んでいて、それぞれ少しずつ異なる日常を送っている。多元宇宙はもともとはSF上の架空の概念とされていたが、20世紀に量子力学が登場して以降その解釈問題を巡ってパラレルワールドの存在が現実的可能性を帯び、科学者たちの間でも真剣に議論されるようになった。
では多元宇宙の数は無限だろうか。それとも有限だろうか。
身近な人間の営みから遥か宇宙の天体運動まで、この世の神羅万象は究極的には物質を形成する素粒子の運動で説明が出来る。ある宇宙に対し、それを構成する素粒子の座標と運動量が僅かでも異なれば、それは別の宇宙となるのだ。
問題はその”僅か”が一体どれほど小さいかだ。もし時間と空間に無限小が存在すれば、各素粒子の座標と運動量のパターンは無限に生じることになる。一方、時間と空間に有限の最小単位が存在すれば、各素粒子の座標と運動量のパターンは(それが凄まじく膨大な数であれ)有限である。
パラレルワールドの数は無限なのか、有限なのか。即ち時間と空間には無限小が存在するのか、有限の最小単位が存在するのか。万物の創造主は一体どちらを選んだのだろうか。