俺の出身高校は県立U高校。埼玉県中から秀才たちが集まって来る、県内随一の進学校である。しかし俺も負けてはいられない。校内模試において、俺は上々の成績を博していた。
そんな俺が在学時、ただの一度も勝てなかったのが、高校1年以来今尚交友のあるA氏である。俺に言わせるならば、A氏は「努力の天才」だ。俺を含め、常人には到底真似できない勉強量を自らに課し、それを平然とこなしていた。
そして高校3年時、A氏は東大を志した。A氏の実力ならば間違いなく受かるであろう、誰もがそう思っていた。しかしA氏は東大不合格。十分に名門大であるがA氏にとっては不本意極まりない国立T大に進学した。
けれどそこで終わらないのがA氏の凄まじいところだ。T大に進むや否や学年首席。3年時には飛び級で大学院に進学、そして超王手企業の幹部候補生として就職を果たしたのである。
思うに、学力には2種類が存在する。ズバリ”瞬発力”と”持続力”である。このうち受験で評価されるのは”瞬発力”のみだ。これについてはA氏本人が認めている。「俺は受験直前期に全く伸びなかった」。
しかしA氏は”持続力”の人だ。高校3年間、大学・大学院5年間、常に好成績を維持し続ける。言うまでもなく容易いことではないが、A氏はそれをやってのける。むしろ社会に出て役立つのは”瞬発力”ではなく”持続力”の方なのではないか。
ちなみに俺は”瞬発力”も”持続力”もない。下を向くな胸を張れ、それが怪物ならざる正常なパンピーというものだ。