善と偽善。双方全く見分けがつかないとして、一体どちらに価値があるだろうか。
アニメ『物語シリーズ』の作中人物・貝木泥舟ならばきっとこう言うであろう。「偽善である。なぜならそこには、本物の善であろうという意志があるのだから」。
先日、近所のスーパーの前で生まれて初めて献血を行った。理由は至って不純、数百グラムでも体重を落としたかったからだ。
「献血によって困っている人が救われる。俺は体重が落ちておいしくご飯が食べられる。まさにWin-Winではないか!」
採血量は400ml。子供の頃から注射は大嫌いだったが、「これも世のため人のため、そして何より俺の体重のため!」
かくして体重が減った俺は、家に帰りおいしく昼食をいただいたのであった。
さて、夕方用あって再びそのスーパーに行くと、まだ献血をやっているではないか。「あれ?あの呼び込みのおにいさん、さっきから立ちっぱなしの声出しっぱなしじゃん!」
「A型、B型、O型、AB型、どれもまだまだ不足しています!今こうしている間にも、輸血が足りなくて手術を受けられずにいる重病患者の人たちがたくさんいるのです!」
呼び込みのおにいさんの訴えに心打たれた俺は、今度こそ本物の使命感にかられた。
「困ってる患者さんがいる?任せろ!俺の血で良かったら、もう何リットルでも抜いてくれ!」
俺は絶対に馬鹿だと思われることを承知の上で、そのおにいさんのもとに再び馳せ参じた。
「先ほど献血をした者ですが、日に2度の献血は出来るのでしょうか?」「すみません、それはお断りしているんです」
…ですよねぇ。