「逆セクハラ」など、都市伝説だと思っていた。
トップ画の通り、俺の髪形はセンター分けだ。もう20年近く同じ髪形である。理由は簡単、センター分けが一番朝楽だからだ。
さて、以前介護職で勤めていた職場は同僚の8割が女性、そしてそのほとんどが年上であった。そこでも俺は毎日センター分けで勤務していた。
そんなある朝、俺は思わず鏡に見とれてしまった。寝癖がまさに完璧なチャラ男ヘアーだったのだ。「これはもはや芸術だ」、俺はセンターで分けずにそのままスプレーで固めて出勤した。
その日自覚はなかったのだが、恐らく相当にオバサンたちのウケが良かったのだろう。それから俺の鬱陶しい日々が始まった。
その日以降も俺はセンター分けで出勤したのだが、同僚のオバサンたちが口々に「あの日の髪形が良かった」、「あの日の髪形で出勤しろ」。
俺は何度も説明した。あの日は奇跡的に寝癖があの形になっていただけで、やろうと思って出来るものではないと。
しかしそれでも「スプレーでもワックスでも何でも使ってあの髪形を再現しろ」、ああうるさい、もう埒が明かん。
今振り返り思う、あれは逆セクハラではなかっただろうか。