聞くところによると、現在日本にはおよそ6000人のプロ漫画家がいるらしい。すでに引退・逝去した作家を合わせれば、戦後活躍した漫画家の数は優に1万を越えるだろう。さて以前、ネットで面白いスレを見かけた。「歴代漫画家の中でレジェンドを5人挙げるとしたら誰か」。その筆頭として挙がったのは”漫画の神様”手塚治虫だ。恐らくこれに異を唱える日本人はいないだろう。
そして問題は、手塚氏以外でレジェンドを残り4人挙げるとしたら誰か。ここでは藤子・F・不二雄、藤子不二雄A、赤塚不二夫、横山光輝、高橋留美子、鳥山明、尾田栄一郎などそうそうたる顔ぶれの名が挙がったが、その中でも特に推す声が強かったのが藤子・F・不二雄、鳥山明、尾田栄一郎の3氏である。そしてその理由は概ね「鳥山氏は『ドラゴンボール』を、尾田氏は『ONE PIECE』を大ヒットさせ、藤子F氏は『ドラえもん』の他にも『パーマン』、『21エモン』、『チンプイ』、『キテレツ大百科』など数々の有名作を抱えているから」というものだった。
◆日本を代表する漫画家といえば?
(「gooランキング」より)
1位 手塚治虫 (代表作/鉄腕アトム) 10751票
2位 藤子・F・不二雄 (ドラえもん) 4715票
3位 鳥山明 (ドラゴンボール) 3704票
4位 尾田栄一郎 (ONE PIECE) 2212票
5位 藤子不二雄A (笑ゥせぇるすまん) 833票
6位 井上雄彦 (SLAM DUNK) 610票
7位 松本零士 (銀河鉄道999) 517票
8位 あだち充 (タッチ) 506票
9位 青山剛昌 (名探偵コナン) 457票
10位 赤塚不二夫 (天才バカボン) 443票 ※以下略
しかしながら、俺はその論議に「ちょっと待った」をコールしたい。もちろん藤子F氏のヒット作の多さは特筆に値する。けれど「鳥山氏は『ドラゴンボール』、尾田氏は『ONE PIECE』、藤子F氏は『ドラえもん』他多数を以て推挙」、裏を返せば「作品単体で見たら『ドラえもん』は『ドラゴンボール』、『ONE PIECE』に見劣りする」、少なくとも俺はそうは思わない。確かに『ドラゴンボール』、『ONE PIECE』は熱狂性において『ドラえもん』を大きく上回るだろう。しかし両作は普遍性、不朽性、広範性などあらゆる点で『ドラえもん』に及ばない。さらに『ドラえもん』は今年でテレビ放送39年。現在「国民的アニメ」と冠されるアニメ作品は『サザエさん』、そして『ドラえもん』だけである。
あるネットユーザーさんの言葉を借りるなら、「藤子・F・不二雄は『ドラえもん』の一発だけで他の漫画家を一掃出来る」。無論、藤子F氏の功績は『ドラえもん』だけではない。しかし氏の最高傑作『ドラえもん』が今尚愛され続けているからこそ、藤子・F・不二雄の名は手塚治虫にも比肩する巨星として漫画史に刻まれているのではないか。