【性善説】とは、人間の本性は基本的に善であるとする倫理学・道徳学説である。これに対し【性悪説】とは人間の本性は基本的に悪であるとしている。これらは共に立証も反証も不可能であり、ゆえにどちらが正しいのか決着を見ることは難しい。
さて第二次大戦後、アメリカが主導する資本主義勢力と、旧ソ連が主導する社会主義勢力の間で東西冷戦が繰り広げられていたことは誰もが知るところであろう。【資本主義】とは個々人の利潤追求のための自由競争を奨励する経済・社会体制であり、一方で【社会主義】とは財の公平・平等分配を掲げる国家体制である。
米ソ冷戦「資本主義VS社会主義」、俺はこれが取りも直さず「性悪説VS性善説」の直接対決であったように思えてならない。もし人間の本性が性善説、即ち「他者と手を取り助け合い、皆で共存共栄を目指そう」というものであったなら、今頃社会主義の理想郷が生まれていただろう。しかし人間の行動原理はそうではなかった。「たとえ他人を蹴落としてでも富、地位、名声を手中に収めたい」、人間が性悪説であったがゆえに資本主義が成功したのではないか。
1991年、ソ連崩壊。それは資本主義が社会主義に勝った歴史的瞬間である。しかしとは言うものの、直ちに人間の本性が性善説ではなく性悪説であることの立証には至るまい。性善説か性悪説か、元より人間はどちらに在るのだろうか。