今や劇団四季の舞台としても有名な『ライオンキング』、元は1994年、米ディズニー社が公開したアニメ映画である。しかし映画『ライオンキング』、公開当時物議をかもしたことをご存知だろうか。作品内容が手塚治虫が1950年に発表した『ジャングル大帝』に酷似しているのだ。
この騒動に対し、手塚プロは一切の抗議を示すことなく声明を発表した。「もし手塚本人が生きていたら、ディズニー作品に影響を与えられたことをとても光栄に思ったでしょう」。かくして、”『ライオンキング』パクり騒動”は沈静化。手塚サイドの寛大な対応が論議に終止符を打ったのである。
しかし”手塚サイドの寛大な対応”、果たしてそれだけであろうか。俺には手塚治虫とディズニー作品の間により強い結びつきがあったように思えてならない。少年時代の手塚氏は初期ディズニー作品の大ファンであり、それらを大いに吸収して漫画家となった。そして手塚作品の登場人物のコミカルかつ躍動的な描写、まさにディズニーのショートフィルムではないか。
もちろん、作品の盗作は許されるものではない。しかしディズニー作品がなければ手塚治虫は生まれなかった。手塚治虫がいなければ今日の漫画・アニメ文化は生まれなかった。そう考えると、「『ジャングル大帝』1作くらい持ってけや」という気がしないでもないのである。