今はどうだか知らないが、学生時代、20代、俺はゲーセンのパンチングマシンが強かった。少なくとも周囲の友人の中では一番強かった。俺の周りには例えば野球部やラグビー部といったゴリゴリの体育会系はいなかったのだが、比較的ソフトな運動部連中ではまず俺の相手にはならなかった。
そのせいか、俺には変な自惚れというか不安があった。「俺が喧嘩で本気で殴ったら、友人に一方的にケガをさせてしまうかも知れない」。冷静に考えたら、思い上がりも甚だしい。ボクサーでも空手家でもない俺のド素人パンチが当たったところで、せいぜいかすり傷を負わせるくらいだろう。しかし万が一、それが”思い上がり”ではなかっとしたら…。そう思うととても怖くて手が上がらず、俺は今まで一度も人を殴ったことがない。結構友人からはバコバコ殴られていたにも関わらずだ。
周囲に聞くと、わりと皆学生時代に友人と掴み合いの喧嘩をしたことがあるらしい。拳と拳で語り合う、そんな漫画みたいな展開に俺は心から憧れる。もっともそれを今やってしまったら、俺の人生はかすり傷じゃ済まなくなるのだが。