俺自身も人のことは言えないが、韓国の人たちは格付けやランキングが大好きだ。常に日本に過剰なライバル心を燃やし、韓国と日本を比較しては一喜一憂するお国柄である。
そして韓国の人たちがしばしば口にするのが、「ソウルは世界でも5本の指に入る都市だ」。一見妄言に聞こえるこの主張、実は決して間違ってはいない。あまり知られていないことだが、ソウルの2014年の域内総生産は8459億ドル。これは世界でも東京、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ第4位の額である。
◆域内総生産ランキング(2014年)
1位 東京(日本) 1兆6170億ドル
2位 ニューヨーク(アメリカ) 1兆4030億ドル
3位 ロサンゼルス(アメリカ) 8605億ドル
4位 ソウル(韓国) 8459億ドル
5位 ロンドン(イギリス) 8357億ドル
6位 パリ(フランス) 8221億ドル
7位 大阪(日本) 6713億ドル
8位 上海(中国) 5940億ドル
9位 シカゴ(アメリカ) 5632億ドル
10位 モスクワ(ロシア) 5533億ドル
11位 北京(中国) 5061億ドル
12位 デュッセルドルフ(ドイツ) 4852億ドル
13位 ヒューストン(アメリカ) 4832億ドル
14位 ワシントンD.C.(アメリカ) 4422億ドル
15位 サンパウロ(ブラジル) 4305億ドル
16位 香港(中国) 4160億ドル
17位 ダラス(アメリカ) 4127億ドル
18位 メキシコシティ(メキシコ) 4036億ドル
19位 広州(中国) 3803億ドル
20位 天津(中国) 3720億ドル
しかし「世界都市」と聞いて人々が連想するのはニューヨーク、ロンドン、パリ、東京であり、アジア内に目を向けても香港、上海、シンガポールだ。真っ先にソウルを挙げる人はまずいないだろう。世界4位の経済規模を誇りながら、なぜソウルは世界都市になれなかったのか。俺からは2つの要因を挙げたい。
(1)巨大消費市場をいくつも抱えるアジアにおいて、世界都市の最も重要な役割は貿易拠点であることだ。そして物資の運搬は主に海上船舶で行われる。例えば東京、香港、シンガポールは臨海都市であり、海外との輸出入によって地域市場を満たしている。しかしソウルは内陸都市であり、海上貿易の中枢にはならない。
(2)1950年の朝鮮戦争以後、韓国と北朝鮮の緊迫関係は依然として続いている。そして韓国の首都ソウルは、北朝鮮との国境38度線からわずか30kmしか離れていないのだ。そのような軍事危険地帯に、世界の国々が安心して人・物・金を送り込める訳がない。
以上の理由により、たとえソウルがいかに巨大経済都市に膨れ上がっても、世界及びアジアの中枢都市には決してなり得ないのだ。
俺はソウルが政治・経済都市として東京より劣るとは思わないし、韓国の人たちの経済発展に向けたこれまでの努力を否定するつもりもない。ただソウルが世界都市として国際的に重要な役割を担うには、あまりにも地政学的条件が不利だったのだ。こればかりは動かぬ事実であり、誰にもどうにもなるまい。