俺が入院した病棟は、患者のほとんどが50、60、70のじいさんたちだ。その世代の人たちは、やたらと自分や他人の出身大学にこだわる。恐らく今より遥かにガチガチだった学歴社会に生きたのだろう。彼らにとって大学名は、何にも勝るステータスなのだ。さすがに病棟に東大卒という神降臨はいなかったが、早慶国立となると扱いは雲上人である。一方俺は日大経済卒。日大卒くらいだと「一応馬鹿ではない」と見なされるようだ。
しかし俺は「日大卒」ではない、まきしまはまきしまだ。この世に「早大卒」、「慶大卒」、「日大卒」という名前の人間は一人も存在しない。「一応馬鹿ではない」、大きなお世話だ。