どこの世界にもあることだろうが、俺の入院した病棟においても”席は決まっていた”。
食事の時間、大ホールのどこの席に座るかは各人の自由である。しかしそれはタテマエだ。実際には誰がどこの席に座るかは暗黙で決められていた。そしてそんな裏ルールを取り仕切っているのは、決まって病棟カーストの上位に君臨する患者のじいさん共である。それこそ俺のような新参の若造が知らずに誰かの席に座ろうものなら、物凄い形相でじいさんが飛んで来る。
今振り返っても、あれは嫌な思い出だ。他に何もない、入院中唯一の楽しみである食事の時間に、なぜあのような理不尽なイス取りゲームをしなきゃならんのか。