俺は量子力学にはサッパリ疎いのだが、不確定性原理が提唱された頃からだろうか。SF作家やオカルトマニアのみならず、物理学者たちの間でも真剣に議論されるようになったのが「多元宇宙論」である。
多元宇宙論とは、それぞれ似たような宇宙がいくつも同時に存在しているという仮説である。あなたが今生きている宇宙も、例えば今朝不慮の事故で死んでしまった宇宙も並行し存在している。そして多元宇宙論には「時間線」という概念が不可欠である。時間線とはある一つの宇宙において過去から未来へ向かい進む時間であり、並行宇宙の数だけ時間線は存在する。あなたが今生きている時間線U1も今朝死んでしまった時間線U2も、全ての時間線が時間軸Tx方向へ平行に伸びている。
しかし、周知の通り空間軸はLx、Ly、Lzと3つ存在するのに対し、時間軸はTx1つだけである。多元宇宙の時間線は無限に存在するにも関わらずだ。俺は思う、時間にも余剰次元があっても良いのではないか。例えば時間軸も空間軸同様Tx、Ty、Tzと3つ存在したならば、もはや我々の宇宙は過去から未来へ一方通行ではない。時間線はあらゆる3次元時間座標へと進み得るのだ。
もっとも、ある時間線UkがTx方向からTy平行へシフトした時、エントロピー時間や宇宙膨張時間は果たしてどうなってしまうのか、全く見当がつかないが。