漫画『SLAM DUNK』。主人公・桜木と流川といえば宿命のライバルにして犬猿の仲である。
コートの内外を問わず、桜木の流川の嫌い方は徹底している。試合中でも桜木は容赦なく流川に噛みつき、絶対に流川にパスを出そうとはしない。
一方、流川の桜木に対する態度はどうであろうか。基本的には「どあほう」と小馬鹿にしながらも、随所随所で桜木を励まし、アドバイスをしているのだ。
なぜ流川は理不尽に絡まれながらも、桜木にそこまでするのだろうか。
桜木には水戸、高宮、野間、大楠といった不良仲間がいるのに対し、流川の友達らしき人物は全巻1コマも登場していない。ぼっちもぼっち、まさに真性のぼっちだ。
そう、流川にとって桜木は「初めて出来た同級生のお友達」なのである。
では流川の桜木に対するほのかな友情、それは一方通行の片想いなのであろうか。思うに、あながちそうとも言い切れない。
桜木と流川はしょっちゅう喧嘩をする。そりゃあもう、ボカスカ殴り合っている。そしてこの殴り合いにこそ、桜木の流川に対する愛情が込められているのだ。
「喧嘩するほど仲が良い」、もちろんそんなうすら寒いことを言うつもりはない。
けれど思い出してみてほしい。三井が鉄男らを率いてバスケ部を襲撃した際のことだ。
流川は三井軍団のラスボス鉄男に、不意打ちとはいえ一撃で倒されている。そして桜木はその鉄男を、圧倒し打ちのめしている。つまりもし桜木が本気を出したら、流川などまさに瞬殺なのだ。
しかしその後も桜木は流川と互角に殴り合っている。これはどう考えても、桜木が流川に対し手心を加えているとしか思えない。
なんと不器用な友情。桜木、流川、もっと素直になればいいのに。