入試の成績だけで振り分けた結果だろう。俺が男子高1年の時のクラスは、奇跡的なまでに運動音痴がそろっていた。野球部やラグビー部、ゴリゴリの体育会系は皆無。かろうじて弓道部や軟式テニス部などのソフト運動部が少々、後は大多数が文化部員、そんなクラスであった。
5月の体育、スポーツテスト50m走。周囲は皆7秒台、8秒台。そんな中俺の走順。「用意、ピッ」、俺のタイムは恐らく一般的には平凡な6秒8。しかし「出た、6秒台」「やべえ、まきしま速えぞ」たかだか6秒台後半で英雄扱い。うむ、これは悪い気はしない。少なくともその時は。
そして6月、クラス対抗体育祭。その選手決めで緊急ホームルーム。さて、体育祭の種目に20人リレーがあった。その名の通り1人100mずつ20人で走るのだが、この20人リレーは極めて重要なルールがある。100m走に出場する2人は参加できないのだ。
20人リレーの鉄則、「第1走者に最も速いエースを置く」。理由は簡単、アウトコースから抜きにかかるより、インコースを抜かれず逃げ切る方が楽だからだ。100m走の出場選手は文句なく快足2人に決まり。残りの烏合の衆で20人リレーをする訳だが、「嘘だろ」その中で一番速かったのがまさかの俺だったのだ。
かくして体育祭当日。俺は20人リレーの第1走者のラインに立っていた。恐らく周りは6秒1から2、そして俺は6秒8、場違いにも程がある。そうこうしているうちにスタートの時間。「用意、パンッ」、まあそりゃそうなるわな。スタートと同時に周りは5m先、そこから10数秒間、俺はほとんど公開処刑である。
そして案の定、俺のクラスはリレーで最下位、総合得点でも最下位だった。「せめて20人リレーで勝ってりゃなあ」「まきしま足遅すぎだろ」。クラスメートの目が冷たい、口調がきつい。あうぅ、これじゃあまるで、俺が体育祭クラス別最下位のA級戦犯みたいではないか。
「ああ、見ての通りだ。確かに俺は足が遅いよ。めちゃくちゃ遅いさ。だけどよくよく考えてみろ、なぜ俺がリレーの第1走者をやるハメになったのか。お前らはその俺より遅かったんだよ」。