点、直線、円…
言うまでもなく、これらは平面図形の名称である。
小学校時代、誰もがコンパスを回し、
定規を用いてノートに描いたことであろう。
しかし俺は、点も直線も円も見たことがない。
当たり前である。そんなものはどこにもないのだから。
面積を持たない点、どこを取っても曲率のない直線、
定点からの半径が完全に等しい円…
それらは、この宇宙に存在しない。
しかし我々は、点、直線、円を、
簡単に頭に思い浮かべることが出来る。
そして描けと言われれば、
誰もがそれに近似したものを容易く描けよう。
それらがこの世に存在しないにも関わらずである。
点、直線、円…
これらは図形ではなく、概念なのではないか。
我々は点、直線、円という概念を解し、
それを平面図形という形で認識しているのである。
ならば我々がコンパスや定規を用いて描き、
「点」「直線」「円」と呼んでいるものとは何なのか。
それらは、概念を示す”記号”である。