昔からそうだった。
俺は臆病で出逢いには消極的だ。
だからいつまで経っても彼女が出来ず、独り身のまま。
けれどそんな俺が友人に、
初めて紹介して欲しいと、心から切望した人がいた―――――
俺まきしま、177cm/70kg!友人甲氏、172cm/81kg!
そこらのチンピラには、まず負けないほどの力自慢だ!!
”腕力のまきしま”はゲーセンのパンチングマシン!
TV企画・元世界チャンプのスコアを同機種で上回る!!
”体幹の甲氏”は高校時代、校内ラグビー大会!
5人を引きずったままトライを決めた伝説を持つ!!
「俺に腕力で勝るヤツ、甲氏に体幹で勝るヤツ、
もし身近にいたら、ぜひ見てみたいもんだ!!」
2人揃って過剰とも言うべき自負心を抱いていたのだが…
まさに耳を疑う報は、今から2年ほど前!
甲氏が!あの体幹の化け物・甲氏が!
なんと会社の同僚・某氏とやらに相撲で負けたのだ!!
しかも某氏は、170cmにも満たない小男と言うではないか!
「腕相撲…じゃなくて相撲で!?あのお前が!?
しかも自分より小柄なヤツに!?」
さらにその某氏!ゲーセンのパンチングマシン、
俺がMAX231の機種で230を叩き出したらしい!!
もう一度言う!170cmにも満たない小男がだ!!
甲氏が、体幹の極みたる相撲で負けたら…
そして同じヤツに俺が、腕力の極みたるパンチで負けたら…
それは単に俺ら2人の敗北じゃない!
埼玉県S市立H中学の敗北だ!!
「すぐにソイツを紹介しろ!
俺がゲーセンで直にパンチ対決で蹴りをつけてやる!!」
あれから2年。出逢いは未だ実現しないまま。
まだ顔も知らない某氏。
けれど某氏のことを想うと、胸がキュンと狭くなる。
いつまでも待ってるから、
春の冷たい夜風にあずけてメッセージ。