あれからもう10年近くが経つのか。
とっくに風化されていいはずの過去。
しかしそれはまるで昨日の事のように、鮮明に脳裏に蘇る。
あの一連の出来事を、俺が忘れることは決してない!
恐らく生涯に渡って―――――
大学時代、俺は会計学ゼミに所属していた。
当時俺は、ゼミの同期たちの中で、
最も頭がキレるうちの一人と目されていた。
そして大学2年時、俺は国税専門官試験に挑戦した。
高校受験の失敗、大学受験の失敗。
俺の胸に克明に刻み込まれたトラウマ!
それに立ち向かうのは決して容易なことではなかった。
大学3年の夏、俺は国税専門官本試に挑んだ。
結果は87点満点中の50点。
合格ボーダーラインに、あと5点届かなかったのだ!
当然ながら周囲の誰もが思った。
俺が受験を続けるものだと。続ければ来年確実に受かると。
しかし俺は、断腸の思いで受験を断念した。
国税専門官試験、そのとてつもない勉強量に、
俺の精神は到底持ちこたえることが出来なかった。
メンタル的に、俺はもう一歩も動くことが出来なかったのだ!
俺が受験した翌年度、
ゼミの同期、甲女史が国税専門官試験に挑んだ。
甲女史はお世辞にも、頭がキレるタイプとは言えなかった。
しかし甲女史には、俺を遥かに上回る努力量、
そして何より、それに十分耐え得るだけのタフネスがあった。
悔しい!悔しい!悔しい!
誰よりも受験で負け続けた俺は知っていた。
それが受験に打ち勝つ最良の素質であり、
俺がどれほど望んでも決して得られぬものであると。
俺はたった一度だけ、甲女史にアドバイスをした。
それは心の底から親身なる一言、
少なくとも俺はそのつもりであった。
「甲ちゃんの場合、知能教科は捨てた方がいい。
甲ちゃんの努力量なら、知識強化でほぼ満点狙えるから」
大学4年時、甲女史は国税専門官本試を受けた。
結果は87点満点中の50点。
なんと偶然にも、前年度の俺の点数と全く同じだったのだ!
その時甲女史が放った言葉を、俺は一生忘れない!
「やっぱりマッキーは凄いね。
全然勉強しなくても、簡単に50点が取れちゃうんだから」
全然勉強しなくても…
甲女史の無邪気な一言は、俺の胸を残酷なまでに切り裂き、
俺は唇が震えるほどの憎悪と殺意を覚えた!
そして大学を卒業し、数年が経った。
完全に忘れかけていた頃、甲女史から1本の電話。
なんと甲女史は、4年越しで国税専門官試験に受かったのだ!
電話で何を話したのかはよく覚えていない。
俺は込み上げる感情を抑え、精一杯の賛辞を送った。
俺は受験を断念した身だ。今さら悔しがる資格はない。
それでも、内に渦巻く嫉妬心は否めなかった。
しかしそれ以上に強く、俺の中である疑問が浮かんだ。
なんで甲女史は、別に特に親しくもなかった、
俺なんかに真っ先に報告したのだろう?
俺はようやく気付かされた。
「甲ちゃんの場合、知能教科は捨てた方がいい」
その言葉が、どれほど深く甲女史の自尊心を傷つけたかを。
「隣の芝は青い」と言う。
誰もが誰かを羨み自らを嘆く、それが人間の摂理であろう。
しかし考えてみたことがあるだろうか?
あなただって、きっと誰かにとってはこの上なく眩しい、
羨まれる存在であることを。
とっくに風化されていいはずの過去。
しかしそれはまるで昨日の事のように、鮮明に脳裏に蘇る。
あの一連の出来事を、俺が忘れることは決してない!
恐らく生涯に渡って―――――
大学時代、俺は会計学ゼミに所属していた。
当時俺は、ゼミの同期たちの中で、
最も頭がキレるうちの一人と目されていた。
そして大学2年時、俺は国税専門官試験に挑戦した。
高校受験の失敗、大学受験の失敗。
俺の胸に克明に刻み込まれたトラウマ!
それに立ち向かうのは決して容易なことではなかった。
大学3年の夏、俺は国税専門官本試に挑んだ。
結果は87点満点中の50点。
合格ボーダーラインに、あと5点届かなかったのだ!
当然ながら周囲の誰もが思った。
俺が受験を続けるものだと。続ければ来年確実に受かると。
しかし俺は、断腸の思いで受験を断念した。
国税専門官試験、そのとてつもない勉強量に、
俺の精神は到底持ちこたえることが出来なかった。
メンタル的に、俺はもう一歩も動くことが出来なかったのだ!
俺が受験した翌年度、
ゼミの同期、甲女史が国税専門官試験に挑んだ。
甲女史はお世辞にも、頭がキレるタイプとは言えなかった。
しかし甲女史には、俺を遥かに上回る努力量、
そして何より、それに十分耐え得るだけのタフネスがあった。
悔しい!悔しい!悔しい!
誰よりも受験で負け続けた俺は知っていた。
それが受験に打ち勝つ最良の素質であり、
俺がどれほど望んでも決して得られぬものであると。
俺はたった一度だけ、甲女史にアドバイスをした。
それは心の底から親身なる一言、
少なくとも俺はそのつもりであった。
「甲ちゃんの場合、知能教科は捨てた方がいい。
甲ちゃんの努力量なら、知識強化でほぼ満点狙えるから」
大学4年時、甲女史は国税専門官本試を受けた。
結果は87点満点中の50点。
なんと偶然にも、前年度の俺の点数と全く同じだったのだ!
その時甲女史が放った言葉を、俺は一生忘れない!
「やっぱりマッキーは凄いね。
全然勉強しなくても、簡単に50点が取れちゃうんだから」
全然勉強しなくても…
甲女史の無邪気な一言は、俺の胸を残酷なまでに切り裂き、
俺は唇が震えるほどの憎悪と殺意を覚えた!
そして大学を卒業し、数年が経った。
完全に忘れかけていた頃、甲女史から1本の電話。
なんと甲女史は、4年越しで国税専門官試験に受かったのだ!
電話で何を話したのかはよく覚えていない。
俺は込み上げる感情を抑え、精一杯の賛辞を送った。
俺は受験を断念した身だ。今さら悔しがる資格はない。
それでも、内に渦巻く嫉妬心は否めなかった。
しかしそれ以上に強く、俺の中である疑問が浮かんだ。
なんで甲女史は、別に特に親しくもなかった、
俺なんかに真っ先に報告したのだろう?
俺はようやく気付かされた。
「甲ちゃんの場合、知能教科は捨てた方がいい」
その言葉が、どれほど深く甲女史の自尊心を傷つけたかを。
「隣の芝は青い」と言う。
誰もが誰かを羨み自らを嘆く、それが人間の摂理であろう。
しかし考えてみたことがあるだろうか?
あなただって、きっと誰かにとってはこの上なく眩しい、
羨まれる存在であることを。