駅の改札を出ると、目の前に広がる巨大な交差点。
むっと押し寄せる汚物の腐臭。
辺り一面余す所なく、ホームレスたちが群がっていた。
僅かな恵みを乞う棒切れのように細いその手は、
力なく震え、今にも折れそうだった。
彼らの大半がとうに就労期を過ぎた老人たちだった。
20XX年、日本は首都圏のいくつかの指定病院で、
医療の無償提供を実施していた。
医療技術の目覚しい進展、数十年前不治と言われた病は、
今やことごとく根治法の解明に至った。
その一方で、日本の社会福祉政策は事実上破綻していた。
減少の一途を辿る労働人口、その僅かな税収では、
増え続ける高齢者に最低水準の生活を保障することなど、
到底望むべくもなかった。
今宵も一人、ホームレスが指定病院に運び込まれた。
彼は145歳になる男性だった。
「肺ガンと脳血栓と腎機能不全ですね。
簡単な手術です。3日もあれば退院出来ますよ」
「殺してくれえ…
わしゃ、もう生きとうないんじゃ…殺してくれえ…」
むっと押し寄せる汚物の腐臭。
辺り一面余す所なく、ホームレスたちが群がっていた。
僅かな恵みを乞う棒切れのように細いその手は、
力なく震え、今にも折れそうだった。
彼らの大半がとうに就労期を過ぎた老人たちだった。
20XX年、日本は首都圏のいくつかの指定病院で、
医療の無償提供を実施していた。
医療技術の目覚しい進展、数十年前不治と言われた病は、
今やことごとく根治法の解明に至った。
その一方で、日本の社会福祉政策は事実上破綻していた。
減少の一途を辿る労働人口、その僅かな税収では、
増え続ける高齢者に最低水準の生活を保障することなど、
到底望むべくもなかった。
今宵も一人、ホームレスが指定病院に運び込まれた。
彼は145歳になる男性だった。
「肺ガンと脳血栓と腎機能不全ですね。
簡単な手術です。3日もあれば退院出来ますよ」
「殺してくれえ…
わしゃ、もう生きとうないんじゃ…殺してくれえ…」