写真つきの年賀状、
そこには友人と旦那さん、そして生後間もない子供の笑顔。
「ふん、見せびらかしとしか思えないわね」
私は人の幸せが嫌いだ。
特に親しい友人の幸せが大嫌いだ。
幸せをつかんだ友人は、
決まってしたり顔で”アドバイス”と称し、
”幸せをつかむ秘訣”とやらを懇々と説いてくる。
何よ、偉そうに。
あなたと私の違いは”運”、それ以外何もないわよ。
また届いた、結婚式の招待状。
別にご祝儀額に見合うほどの吉報じゃないわ。
あー、馬鹿みたい!
私以外、みんな不幸になればいいのに!
「こんばんわ、お嬢さん」
「誰?どこから入ったの?」
「ご心配なさらず、これはあなたの夢の中です」
「見るからに怪しげな男が不法侵入。
夢でもいい気はしないわね」
「申し遅れました。私、”幸せ銀行”の者です」
「”幸せ銀行”?ウサン臭…
人を騙したいなら、まずネーミングから練り直しね」
「今日はあなたに耳寄りなお話を持って参りました」
「何よ?まさか銀行が結婚相手でも斡旋してくれる訳?」
「今日はあなたに、”不幸の預金通帳”を持って参りました」
「あら、私の不幸に同情してお金でもくれるの?」
「いえいえ、不幸になって頂くのは、
あなたの大切な方々です」
「私の大切な…」
「あなたの周りの方が不幸に見舞われる度に、
その不幸の度合いに応じて預金が加算されていきます」
「ちょっと待って、言ってる意味が分からないんだけど…」
「それではあなたに、より良い”不幸”が訪れますよう…」
「ちょっと待ちなさいよ!一体何なのよ…」
朝、目が覚めると、
枕元には”不幸の預金通帳”が置いてあった。
あの夢の中の男が言ったことは本当だった。
同僚がミスをする度、課長に叱られる度、
”不幸の預金通帳”には100円、200円と加算されていった。
何これ?ちょっと凄いじゃない!
1週間経って、預金残高は5600円。
ちょっと今ひとつ不幸が物足りないのよねえ。
そんな時、
私は友人のA子に呼び出された。
「どうしたのよ?改まっちゃってさあ」
「…うん…あのね…私の旦那が浮気してるの…」
キタキタキターー!!
待ちに待った大不幸!!
私はちらっと”不幸の預金通帳”を見る。
うわ!凄い!一気に15万円アップ!!
涙交じりに話すA子。
私は親身に相談に乗りながらも、
内心、笑いが止まらなかった。
またある時、
友人B子が離婚したと聞かされた。
私は”不幸の預金通帳”を見る。
やった!!ついに100万円越え!!
あー、楽しい!
人の不幸ってサイコー!!
「こんばんわ、お嬢さん」
「ああ、あなたは”幸せ銀行”の…」
「”不幸の預金通帳”はお気に召しましたか?」
「ええ、とても素敵な通帳ね」
「そうですか、それは何より…」
「でもねえ…」
「どうなさいましたか?」
「今ひとつ金額が物足りないのよねえ、
もっとこう、大きな不幸をドッカーンってさ」
「今の”不幸”では足りないと…」
「そうなのよ。早く誰かとんでもない不幸に遭わないかなぁ…」
「そうですか…分かりました。
あなたにとって一番大切な人が、
この上ない不幸に見舞われれば、
預金残高は一気に増えますが、いかがいたしましょう?」
「大切な人…?誰だろ?別にいないわよ?」
「いえ、あなたが心の底から大事に思う人、
それはこの世に一人しかいません」
「分かんないなぁ…ま、いいわ、その人で」
「分かりました。ご要望の通りにいたします」
「頼むわね。なるべく凄っごい不幸をね!」
「仏さんは20代女性、
外傷なし、侵入された形跡もなしか…」
「死因は何でしょうね?」
「ちょっと司法解剖してみないと分からんなぁ…」
「あ、この仏さん、何か握ってますよ。
何だこれ?預金通帳?」
「それも備品として押収だな」
「うわ凄っげ、残高が1億円越えてますよ!」
そこには友人と旦那さん、そして生後間もない子供の笑顔。
「ふん、見せびらかしとしか思えないわね」
私は人の幸せが嫌いだ。
特に親しい友人の幸せが大嫌いだ。
幸せをつかんだ友人は、
決まってしたり顔で”アドバイス”と称し、
”幸せをつかむ秘訣”とやらを懇々と説いてくる。
何よ、偉そうに。
あなたと私の違いは”運”、それ以外何もないわよ。
また届いた、結婚式の招待状。
別にご祝儀額に見合うほどの吉報じゃないわ。
あー、馬鹿みたい!
私以外、みんな不幸になればいいのに!
「こんばんわ、お嬢さん」
「誰?どこから入ったの?」
「ご心配なさらず、これはあなたの夢の中です」
「見るからに怪しげな男が不法侵入。
夢でもいい気はしないわね」
「申し遅れました。私、”幸せ銀行”の者です」
「”幸せ銀行”?ウサン臭…
人を騙したいなら、まずネーミングから練り直しね」
「今日はあなたに耳寄りなお話を持って参りました」
「何よ?まさか銀行が結婚相手でも斡旋してくれる訳?」
「今日はあなたに、”不幸の預金通帳”を持って参りました」
「あら、私の不幸に同情してお金でもくれるの?」
「いえいえ、不幸になって頂くのは、
あなたの大切な方々です」
「私の大切な…」
「あなたの周りの方が不幸に見舞われる度に、
その不幸の度合いに応じて預金が加算されていきます」
「ちょっと待って、言ってる意味が分からないんだけど…」
「それではあなたに、より良い”不幸”が訪れますよう…」
「ちょっと待ちなさいよ!一体何なのよ…」
朝、目が覚めると、
枕元には”不幸の預金通帳”が置いてあった。
あの夢の中の男が言ったことは本当だった。
同僚がミスをする度、課長に叱られる度、
”不幸の預金通帳”には100円、200円と加算されていった。
何これ?ちょっと凄いじゃない!
1週間経って、預金残高は5600円。
ちょっと今ひとつ不幸が物足りないのよねえ。
そんな時、
私は友人のA子に呼び出された。
「どうしたのよ?改まっちゃってさあ」
「…うん…あのね…私の旦那が浮気してるの…」
キタキタキターー!!
待ちに待った大不幸!!
私はちらっと”不幸の預金通帳”を見る。
うわ!凄い!一気に15万円アップ!!
涙交じりに話すA子。
私は親身に相談に乗りながらも、
内心、笑いが止まらなかった。
またある時、
友人B子が離婚したと聞かされた。
私は”不幸の預金通帳”を見る。
やった!!ついに100万円越え!!
あー、楽しい!
人の不幸ってサイコー!!
「こんばんわ、お嬢さん」
「ああ、あなたは”幸せ銀行”の…」
「”不幸の預金通帳”はお気に召しましたか?」
「ええ、とても素敵な通帳ね」
「そうですか、それは何より…」
「でもねえ…」
「どうなさいましたか?」
「今ひとつ金額が物足りないのよねえ、
もっとこう、大きな不幸をドッカーンってさ」
「今の”不幸”では足りないと…」
「そうなのよ。早く誰かとんでもない不幸に遭わないかなぁ…」
「そうですか…分かりました。
あなたにとって一番大切な人が、
この上ない不幸に見舞われれば、
預金残高は一気に増えますが、いかがいたしましょう?」
「大切な人…?誰だろ?別にいないわよ?」
「いえ、あなたが心の底から大事に思う人、
それはこの世に一人しかいません」
「分かんないなぁ…ま、いいわ、その人で」
「分かりました。ご要望の通りにいたします」
「頼むわね。なるべく凄っごい不幸をね!」
「仏さんは20代女性、
外傷なし、侵入された形跡もなしか…」
「死因は何でしょうね?」
「ちょっと司法解剖してみないと分からんなぁ…」
「あ、この仏さん、何か握ってますよ。
何だこれ?預金通帳?」
「それも備品として押収だな」
「うわ凄っげ、残高が1億円越えてますよ!」