【妄想劇場】 ある夜の客人 | まきしま日記~イルカは空想家~

まきしま日記~イルカは空想家~

ちゃんと自分にお疲れさま。

「すみません…一夜の宿を恵んでもらえませんか…」
「なんてみすぼらしい格好。
うちにはあなたのような人を泊める場所はありません!」

「すみません…一夜の宿を恵んでもらえませんか…」
「なんて図々しいじいさんだ。他当たってくんな!」

「すみません…一夜の宿を恵んでもらえませんか…」
「臭い臭い!とっととどっかへ消えちまいな!」

「すみません…一夜の宿を恵んでもらえませんか…」
「ごめんなさい。うちは貧しくて、とてもおもてなしなど…」
「ママ、可哀想だよ。このおじいさん、とても寒そうじゃん」
「でも…」
「おじいさん、うちみたいな貧乏な家で良かったら、
是非泊まっていきなよ!」



一切れのパンとスープ。
いつもの貧しい食卓が、
一人の客人を迎えたことで、
花が咲いたようににぎやかになった。

翌朝その子が目を覚ますと、
その老人はもう去った後だった。
枕元には木彫りの人形、
それは赤い服に白い髭、そして大きな袋を持った老人だった。



後に絵本作家となったその子は、
1821年、『子供たちのお友達』と言う絵本の中で、
赤い服に白い髭、そして大きな袋をかつぎ、
トナカイのそりに乗って子供たちに玩具を配る老人を紹介した。

彼は一生忘れない。
12月24日のあの夜のことを。