「よう」
「おう、遅くなったな」
「とりあえず生中でいいか?」
「ああ、頼むわ」
「すみませーん!生中一つ!」
「……」
「しかし、こうして飲むのは何年ぶりだ?」
「んー…3年ぶりくらいになるかな…」
「3年ぶりか…時間が経つのはあっと言う間だな」
「……」
「そういや”生前鑑定士”に受かったってな」
「ああ、死ぬほど努力したからな」
「もう死んでるじゃねーか」
「うるせーよ」
「おめでとう!ほれ、乾杯!」
「おお、サンキュ」
「しかし生前あれほど勉強嫌いだったお前がなぁ…。
今じゃ”生前鑑定士”様かぁ…」
「……」
「どうだ?仕事は板についてきたか?」
「ん…うん…」
「今どんな仕事してるんだ?」
「ん…”閻魔法廷”の書記かな…」
「”閻魔法廷”かぁ、大したもんだ」
「…どうだかな?」
「ん?」
「俺はさぁ…何も書記がやりたくて、
”生前鑑定士”を受けたんじゃねえんだよ」
「……」
「本当は自分で事務所構えてよ、
そして悠々と天国で暮らしてる奴らの悪事を、
片っ端から暴いてやりたかった…」
「……」
「今の”閻魔法典”だとさ、
『生前懲役3年相当以上の実刑判決を受けた者、
及び著しく倫理・道徳に欠く所業を成した者は、
地獄にてこれを処遇す』」
「……」
「でもよ、
この『著しく倫理・道徳に欠く所業』ってのが実に曖昧でさ、
実際は生前懲役刑を受けなかった奴らは、
みんな天国にスルーパス」
「……」
「でもおかしいと思わないか?
例えば従業員5万人の会社を意図的に乗っ取って潰したら、
それは5万人を殺したに等しい行為だ」
「……」
「でもそんな奴らは悠々と天国行き、
会社潰されて食うに困って悪事を働いた奴は地獄行き、
そんな馬鹿な話があるかよ?」
「……」
「”生前鑑定士”に受かったら独立開業してさ、
そんな”法に触れない悪事”をどんどん暴いてやりたかった…」
「……」
「だけど…
今の俺は所詮宮仕えの一官僚、
やってることは書記!書記!毎日書記!!」
「……」
「はは…手が痛くなっちまうよ。
キーボードがあった生きてた頃が懐かしいや…」
「……」
「……」
「俺はさあ…」
「ん?」
「お前が”生前鑑定士”受けるって聞いた時、
正直止めようと思ったんだよ」
「はは…やっぱ俺じゃ受からないと思ったか?」
「いや、お前の能力面は全く問題ないと思ってたよ」
「……」
「たださ…
”生前鑑定士”はもうあぶれててさ、
昔みたいに独立開業して好きなこと出来る時代じゃないから、
受かっても仕事が無いと思ってた」
「……」
「でもお前は”生前鑑定士”に受かって、
今、立派に”閻魔法廷”の書記を勤めてる。
これは俺には予想外なことだった」
「……」
「『受かっても仕事は無い』これは所詮机上の空論、
『受かったら独立して好きなことをやる』これも机上の空論、
現実は努力して受かった奴にしか分からない」
「……」
「全く知らない世界に挑戦するってことはさ、
常に思い通りな結果が待ってるとは限らないよ」
「……」
「でも何もかもが空論に過ぎなかったものがさ、
努力に努力を重ねた結果、
決して大当たりではないけど大外れでもない現実を掴んだ、
俺はそれを”成功”と呼ぶんだと思うぜ」
「……」
「お前は”成功”を掴んだんだよ!」
「…そうかな?」
「ああ、俺はそう思うぜ」
「そっかぁ…”成功”かぁ…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「そういや、お前は今何してんだ?」
「俺か?俺は今は”三途の川”の清掃のバイトかな。
でも飽きてきた。そろそろ他を探そうかな?」
「お前のそういうとこ、生前と全く変わらねえな」
「ははは…うるせーよ」
「……」
「おう、遅くなったな」
「とりあえず生中でいいか?」
「ああ、頼むわ」
「すみませーん!生中一つ!」
「……」
「しかし、こうして飲むのは何年ぶりだ?」
「んー…3年ぶりくらいになるかな…」
「3年ぶりか…時間が経つのはあっと言う間だな」
「……」
「そういや”生前鑑定士”に受かったってな」
「ああ、死ぬほど努力したからな」
「もう死んでるじゃねーか」
「うるせーよ」
「おめでとう!ほれ、乾杯!」
「おお、サンキュ」
「しかし生前あれほど勉強嫌いだったお前がなぁ…。
今じゃ”生前鑑定士”様かぁ…」
「……」
「どうだ?仕事は板についてきたか?」
「ん…うん…」
「今どんな仕事してるんだ?」
「ん…”閻魔法廷”の書記かな…」
「”閻魔法廷”かぁ、大したもんだ」
「…どうだかな?」
「ん?」
「俺はさぁ…何も書記がやりたくて、
”生前鑑定士”を受けたんじゃねえんだよ」
「……」
「本当は自分で事務所構えてよ、
そして悠々と天国で暮らしてる奴らの悪事を、
片っ端から暴いてやりたかった…」
「……」
「今の”閻魔法典”だとさ、
『生前懲役3年相当以上の実刑判決を受けた者、
及び著しく倫理・道徳に欠く所業を成した者は、
地獄にてこれを処遇す』」
「……」
「でもよ、
この『著しく倫理・道徳に欠く所業』ってのが実に曖昧でさ、
実際は生前懲役刑を受けなかった奴らは、
みんな天国にスルーパス」
「……」
「でもおかしいと思わないか?
例えば従業員5万人の会社を意図的に乗っ取って潰したら、
それは5万人を殺したに等しい行為だ」
「……」
「でもそんな奴らは悠々と天国行き、
会社潰されて食うに困って悪事を働いた奴は地獄行き、
そんな馬鹿な話があるかよ?」
「……」
「”生前鑑定士”に受かったら独立開業してさ、
そんな”法に触れない悪事”をどんどん暴いてやりたかった…」
「……」
「だけど…
今の俺は所詮宮仕えの一官僚、
やってることは書記!書記!毎日書記!!」
「……」
「はは…手が痛くなっちまうよ。
キーボードがあった生きてた頃が懐かしいや…」
「……」
「……」
「俺はさあ…」
「ん?」
「お前が”生前鑑定士”受けるって聞いた時、
正直止めようと思ったんだよ」
「はは…やっぱ俺じゃ受からないと思ったか?」
「いや、お前の能力面は全く問題ないと思ってたよ」
「……」
「たださ…
”生前鑑定士”はもうあぶれててさ、
昔みたいに独立開業して好きなこと出来る時代じゃないから、
受かっても仕事が無いと思ってた」
「……」
「でもお前は”生前鑑定士”に受かって、
今、立派に”閻魔法廷”の書記を勤めてる。
これは俺には予想外なことだった」
「……」
「『受かっても仕事は無い』これは所詮机上の空論、
『受かったら独立して好きなことをやる』これも机上の空論、
現実は努力して受かった奴にしか分からない」
「……」
「全く知らない世界に挑戦するってことはさ、
常に思い通りな結果が待ってるとは限らないよ」
「……」
「でも何もかもが空論に過ぎなかったものがさ、
努力に努力を重ねた結果、
決して大当たりではないけど大外れでもない現実を掴んだ、
俺はそれを”成功”と呼ぶんだと思うぜ」
「……」
「お前は”成功”を掴んだんだよ!」
「…そうかな?」
「ああ、俺はそう思うぜ」
「そっかぁ…”成功”かぁ…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「そういや、お前は今何してんだ?」
「俺か?俺は今は”三途の川”の清掃のバイトかな。
でも飽きてきた。そろそろ他を探そうかな?」
「お前のそういうとこ、生前と全く変わらねえな」
「ははは…うるせーよ」
「……」