【妄想劇場】 僕と彼女の生活 | まきしま日記~イルカは空想家~

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ちゃんと自分にお疲れさま。

朝起きると、
彼女は僕の布団にもぐり込んで寝ていた。

「うわあっ!!」
僕の悲鳴に彼女も目を覚ましたようだ。

「あのさあ、僕の布団で寝るのは構わないけど、
人間の姿になるのはやめてくれないかなあ」
「にゃあ」

「にゃあ」じゃねえよ、全く…



彼女と出会ったのは一年前、
ある雨の強い夜だった。

「にゃあ、にゃあ…」
一匹の猫が、僕の部屋の窓を叩いていた。

動物は嫌いなんだけどな…
僕は仕方なくその猫を部屋に入れてやった。

えっ!?ええっ!?
その猫は見る見る人間の姿になった。「にゃあ」



こうして、
僕と彼女との不思議な共同生活が始まった。

彼女はたいてい猫の姿のまま。
そして実に良く僕になついた。

猫ってこんなに人間になつくものなのかな?
こうしてミルクを飲んでる姿は、どう見ても猫なんだけどな…

でも彼女は時々気まぐれで人間の姿になった。
その度に僕はドキッとさせられるのだ。



ある朝、彼女はひどく機嫌が悪かった。
部屋中を飛び回っては、辺り構わず引っかき回した。

「いいか、僕は大学に行って来るからな。
おとなしくしてるんだぞ」



「ケンイチ君って、好きな人いるの?」
ゼミの共同研究の最中、ナオミちゃんの唐突な質問に僕は動揺した。

「いないんだったら、今度一緒に映画観に行かない?」
好きな人…?何故だろう、とっさに頭に浮かんだのは彼女だった。

(にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ…)
うるさい!うるさい!お前は猫だ!ただの猫だ――!!

「ごめん、今好きな人がいるんだ」



はーあ…
僕は馬鹿だ…世界一の大馬鹿だ…

家に帰ると、
彼女はすっかり機嫌よく僕を出迎えた。「にゃあ」

彼女は人なつっこく、僕の足に擦り寄ってくる。
お前のせいだからな!分かってるのか?「にゃあ」

「にゃあ」じゃねえよ、全く…