あの光景は忘れない。
野次馬が群がっていた。
夏の灼熱のアスファルト、老人がピクリともせず倒れていた。
なんで黙って見てられるんだ?
人だかりを押しのけて僕は、
老人を仰向けにし、
教習所で教わった心肺蘇生法を試みた。
何度も何度も、救急車が到着するまで何度も何度も…
そして老人は死亡した。
死因は、胸部圧迫によるショック死だった。
僕は過失致死罪で検挙され、
判決は有罪、
3年の執行猶予が科せられた。
そして僕は何もかも失った。
僕は人殺しというレッテルを貼られ、
内定していた警察官の採用も取り消し、
恋人の父親にも「もう会うな」と言われた。
何が正義だ!何が使命だ!
僕もアイツらのように、
我関せずとばかりに冷たい目をして眺めていたヤツらと一緒に、
ただ傍観していれば良かったんだ!
僕は睡眠薬を飲んだ。
命を以て命に償う、誰にも文句はあるまい!
こんな腐った世の中に、もう何の未練もなかった。
目を覚ました時、
僕の上には母が押し乗っていた。
母は僕に心肺蘇生法を施していた。
僕の開いた目を見ると、
ワーーッと声をあげて母は泣き崩れた。
胸に巻いたコルセットが、
どこまでも僕を締め付ける。
華奢な母のか細い手でへし折られた肋骨、
その渾身の祈りは、幾ばくのものだったであろうか。
やがて骨折は完治するだろう。
でも、この胸の痛みは消えることはない。
この痛みは命の痛みであり、
二つ目の命まで投げ出そうとした僕の罪に対する、
生涯に渡る執行猶予だ。
野次馬が群がっていた。
夏の灼熱のアスファルト、老人がピクリともせず倒れていた。
なんで黙って見てられるんだ?
人だかりを押しのけて僕は、
老人を仰向けにし、
教習所で教わった心肺蘇生法を試みた。
何度も何度も、救急車が到着するまで何度も何度も…
そして老人は死亡した。
死因は、胸部圧迫によるショック死だった。
僕は過失致死罪で検挙され、
判決は有罪、
3年の執行猶予が科せられた。
そして僕は何もかも失った。
僕は人殺しというレッテルを貼られ、
内定していた警察官の採用も取り消し、
恋人の父親にも「もう会うな」と言われた。
何が正義だ!何が使命だ!
僕もアイツらのように、
我関せずとばかりに冷たい目をして眺めていたヤツらと一緒に、
ただ傍観していれば良かったんだ!
僕は睡眠薬を飲んだ。
命を以て命に償う、誰にも文句はあるまい!
こんな腐った世の中に、もう何の未練もなかった。
目を覚ました時、
僕の上には母が押し乗っていた。
母は僕に心肺蘇生法を施していた。
僕の開いた目を見ると、
ワーーッと声をあげて母は泣き崩れた。
胸に巻いたコルセットが、
どこまでも僕を締め付ける。
華奢な母のか細い手でへし折られた肋骨、
その渾身の祈りは、幾ばくのものだったであろうか。
やがて骨折は完治するだろう。
でも、この胸の痛みは消えることはない。
この痛みは命の痛みであり、
二つ目の命まで投げ出そうとした僕の罪に対する、
生涯に渡る執行猶予だ。