「ナオキ…だよね?」
彼女と偶然再会したのは、
上京して3年目の春だった。
「久しぶり!元気…してた?」
彼女のその出で立ちが、
どこかよそそよそしいこの街並みの一部として馴染んでしまっていたことが、
なんだか無性に物悲しかった。
「キレイになったね…とてもキレイだよ」
僕は心にも無い、でも決して嘘ではない賛辞を彼女に贈った。
彼女は本当にキレイだった。
ぽっちゃりとしていた体つきは儚げにやせ細り、
いつもGパンにジャンバーだった服装は、都会的に洗練され、
もっさりとしていた黒髪はライトブラウンに整えられ、
小鼻を少し整形したと言ってたが、それだけだろうか?
化粧栄えしたその表情は、まるで別人だった。
「ちょっと歩こうか」
彼女と並んで公園のイチョウ並木を歩く。
夢にまで見ていたそのシチュエーションは、
どこか夢見ていたものとは程遠かった。
昔はとても目を見て話せなかった。
手の汗が止まらなかった。
でも今、こうして、
彼女とごく普通に歩いている。
そう、がっかりするほどごく普通に。
会話はしばしば途絶えた。
(今何しているの?)
(付き合っている人とかいるの?)
そんな野暮な質問は、彼女との距離が挟ませなかった。
互いの”今”に触れてはいけない、
そんな共通認識が、
僕と彼女との間に不思議な雰囲気を作り出していた。
あれから、何人かの女の子を知った。
生々しい心情や、あまりに人間臭い欲情を知った。
でも彼女だけは違う、彼女だけは特別だ、
ずっとそう信じていた。
でも、そうではなかった。
どこにでもいる女の子、
そう、彼女もごく普通の女の子だった。
そのことにどこかホッとし、どこか失望していた。
「ナオキって…やっぱカッコいいよね…」
彼女がポロッとそんなことをこぼした。
「本当に?真にうけるよ?」
僕は困惑していた。
彼女は決してそんなことを口にする子ではなかった。
でももっと驚くべきなのは、
彼女のその言葉に微塵の感銘も受けていない僕自身であった。
「じゃあ、私、予定あるからそろそろ行くね」
その予定が何であるかさえ聞かなかった。
結局、電話番号も聞かずに彼女と別れた。
(もう、好きではなくなっていたんだ…)
変わってしまったのは彼女だけではない、
そう胸に書き記して、そっとページを閉じた。
彼女と偶然再会したのは、
上京して3年目の春だった。
「久しぶり!元気…してた?」
彼女のその出で立ちが、
どこかよそそよそしいこの街並みの一部として馴染んでしまっていたことが、
なんだか無性に物悲しかった。
「キレイになったね…とてもキレイだよ」
僕は心にも無い、でも決して嘘ではない賛辞を彼女に贈った。
彼女は本当にキレイだった。
ぽっちゃりとしていた体つきは儚げにやせ細り、
いつもGパンにジャンバーだった服装は、都会的に洗練され、
もっさりとしていた黒髪はライトブラウンに整えられ、
小鼻を少し整形したと言ってたが、それだけだろうか?
化粧栄えしたその表情は、まるで別人だった。
「ちょっと歩こうか」
彼女と並んで公園のイチョウ並木を歩く。
夢にまで見ていたそのシチュエーションは、
どこか夢見ていたものとは程遠かった。
昔はとても目を見て話せなかった。
手の汗が止まらなかった。
でも今、こうして、
彼女とごく普通に歩いている。
そう、がっかりするほどごく普通に。
会話はしばしば途絶えた。
(今何しているの?)
(付き合っている人とかいるの?)
そんな野暮な質問は、彼女との距離が挟ませなかった。
互いの”今”に触れてはいけない、
そんな共通認識が、
僕と彼女との間に不思議な雰囲気を作り出していた。
あれから、何人かの女の子を知った。
生々しい心情や、あまりに人間臭い欲情を知った。
でも彼女だけは違う、彼女だけは特別だ、
ずっとそう信じていた。
でも、そうではなかった。
どこにでもいる女の子、
そう、彼女もごく普通の女の子だった。
そのことにどこかホッとし、どこか失望していた。
「ナオキって…やっぱカッコいいよね…」
彼女がポロッとそんなことをこぼした。
「本当に?真にうけるよ?」
僕は困惑していた。
彼女は決してそんなことを口にする子ではなかった。
でももっと驚くべきなのは、
彼女のその言葉に微塵の感銘も受けていない僕自身であった。
「じゃあ、私、予定あるからそろそろ行くね」
その予定が何であるかさえ聞かなかった。
結局、電話番号も聞かずに彼女と別れた。
(もう、好きではなくなっていたんだ…)
変わってしまったのは彼女だけではない、
そう胸に書き記して、そっとページを閉じた。