【妄想劇場】 告別式

告別式の間、
男はずっと、自分の棺を上から見つめていた。



課長が俺の棺の前で泣いている。
俺を死に至らしめた張本人が、
よくもまあ、一体どの面下げて、
喪服をまとってこの場に居合わせてやがる。

嫁が、娘が、俺の棺にすがって泣いている。
今まで散々俺を足蹴にしやがって、
その心にもない涙で、
一体何を演出した気になってやがる。

どいつもこいつも、
わざとらしく神妙な面しやがって。
その薄っぺらい偽善の皮を、
この手で剥ぎ取ってやりたい。



誰一人愛せなくなった。
きっとこれが、俺の心の寿命なのだろう。



男は静かに、
天へと昇っていった。